1月20日、著名ファミレスの「ガスト」や「ジョナサン」を手がけるファミリーレストラン最大手の「すかいらーくホールディングス」は、2020年4月までに24時間営業を全廃すると発表した。1972年から50年近く続いた深夜営業は、人手不足や夜間の客足減を背景として廃止される形となった。
本件はなぜか「働き方改革」という文脈で片付けられやすい。しかし、問題はそれほど単純ではない。時短営業のきっかけが違法残業や過酷な労働によるものであれば話は別だが、今回は人件費の高騰や、夜間の客足減速によるものだからだ。
そもそも夜間に営業しないという方針は、深夜に働きたいという労働者の労働機会が確保されないため、多様な働き方を容認する「働き方改革」の趣旨からしてもズレた見方であるといえるだろう。このことは、トヨタが夜間のみ働くことのできる期間従業員制度を先月導入したことからもいえることだ。
筆者がすかいらーくの24時間営業撤廃を手放しで喜べない理由を端的にいえば、内部で増加するコストを、すかいらーく自身で吸収していることによる経済的なリスクにある。
24時間営業の撤廃、つまり営業時間の削減は、近年スーパーなどでも目立ち始めた、新たな”実質値上げ”の類型だ。
実質値上げといえば、主にコンビニチェーンや、製菓メーカーの弁当や菓子が槍玉に挙げられやすい。例え価格は据え置きでも、量が減ったり、低グレードの原料になったりという変化が生じれば、消費者の得られる効用は目減りする。これが典型的な「実質」値上げだ。
一方で、近年増加しているのがサービス面での実質値上げだ。通常、外食や小売等の販売価格には、原価に加えて、サービスにかかる費用も加味されている。例えば、百貨店や家電量販店であれば、商品を展示したり、従業員が丁寧に顧客対応を行ったりするというサービスが行われるため、そのようなサービスがないネットショップに比べて価格が高くなる傾向がある。
営業時間の短縮は、同じ価格で「いつでも開いている利便性」というサービスが低下していることになる。したがって、営業時間の短縮はサービス面での実質値上げとして整理される。では、なぜサービス面での実質値上げが問題になるのか。まずは外食業界の構造的問題から考えていこう。
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