米国でじわじわ ビール会社が参入する「酔わない」ビジネス(3/4 ページ)

» 2020年01月30日 08時00分 公開
[藤井薫ITmedia]

ノンアルコールや低アルコールビールが注目

 モルソン・クアーズは、断酒に挫折してしまう人が多いという事実を逆手にとって、ノンアルコールではなく、低アルコールビールで無理なくドライジャニュアリーにチャレンジすることを提案。限りなくドライに近いキャンペーン「Dry-ish January」を立ち上げ、アルコール度数が2.8%で低カロリー(64kcal)の「Miller64」をプロモーションしている。

モルソン・クアーズ、アルコール度数2.8%で低カロリーの「Miller64」をプロモーション

 低アルコールビールの「Miller64」は、08年に販売開始した商品なのだが、19年にリニューアルして、この新たなキャンペーンを打ち出し、ミレニアル世代に狙いを定めているという。

 モルソン・クアーズは、主力商品のビールの売り上げが低迷しているため、事業の立て直しの真っ只中にいる。時代の変化に合わせて社名を変更しただけでなく、大規模のリストラも予定している。そのため、ビール市場で急成長しているノンアルコールや低アルコールビールのカテゴリーを強化するのは、緊急の課題となっているようだ。

 そうなると気になるのが、業界最大手で「Budweiser(バドワイザー)」を展開する、Anheuser-Bush InBev(アンハインザー・ブッシュ・インベブ)の動向だ。同社は、ドライジャニュアリーに関連したプロモーションを行っていないが、かなり前からノンアルコールや低アルコールビールの販売を強化している。

 米国でビールと言えば、国産のラガービールが主流だった時代から、近年はクラフトビールが人気になっている。その後は、メキシコ産インポートビールの人気に続き、さらに健康志向の流れから、ここまで述べたようなノンアルコールや低アルコールビールが注目されるようになっている。

 そのトレンドに合わせるかのように、アンハインザー・ブッシュは、クラフトビールのブランドを次々と買収したり、ノンアルコールビールのカテゴリーで新商品を続々と発売してきた。同社が展開するノンアルコールビールには、米国で90年に発売され最も知名度が高い「O’Doul’s」がある。ほかには、カナダで展開しているノンアルコールビールの「Budweiser Prohibition」やインドで19年に発売した「Budweiser 0.0」もある。

 バドワイザーのノンアルコールビールは、米国の一部地域でテストマーケットを実施しているようだが、まだ全米展開するには至っていないようだ。

 現在、アンハインザー・ブッシュで取り扱うノンアルコールや低アルコールビールの販売量は、ビール全体の8%程度しかない。しかし、25年までに、少なくとも20%までに引き上げるのを目標としている。いずれにしても、ビール業界にとって重要なマーケットである米国で、アルコール離れが進んでいる状況に、企業は危機感を抱いている。

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