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» 2020年01月30日 16時00分 公開

専門家のイロメガネ:報酬5億円でゴーンの暴走を放置した西川前社長の責任(中編) (4/5)

[中嶋よしふみ,ITmedia]

運用リスクを日産に押し付けたゴーン氏の謎の言い訳

 ゴーン氏もクロだと断言したように、あきらかに問題行動を起こしている。

 ゴーン氏は個人的な資産運用のリスクを日産に押し付けている。これが3回目の逮捕容疑となる。この話が報じられた際には個人の取引を法人に付け替える、しかもオーナー会社ではなく上場企業でそんなことはそもそも可能なのか? と疑問だったが、それが事実であると分かった際には腰を抜かしそうになった。

 その後この取引は、給料を円でもらっている一方で普段の生活はドルで支払いっていることから、為替変動のリスクを避けるための取引であるとも報じられた。一見するともっともらしい説明だが、損失額が10億円以上と大きすぎる。なぜそのような巨額の取引を行ったのか、ゴーン氏は自ら法廷で語っている。

ゴーン氏(写真 ロイター)

 日産で働くことになった際に報酬はドルで希望したが受け入れられなかった。それ以来、為替の変動に懸念を抱いていたという。

 数々の無茶な行動をしてきたゴーン氏の発言としては、ハッキリ言って意味不明だ。世界中で事業を展開している日産では、ドルやユーロなど円以外で報酬を受け取る社員は多数いるだろう。仮に何かしらの社内規定で当初は断られたとしても、最高経営責任者となったゴーン氏が自身の報酬をドルに変更する権限すらなかったとは到底考えられない。

 加えて急激な円高と、リーマンショックによる株価の急落で多額の損失が発生し担保が不足したとも説明しているが、このあたりの説明もさらに意味不明だ。

 報酬複数年分に渡る多額かつ長期の為替取引をしていたならば、為替リスクを避けるためではなく、ただの資産運用だ。運用スタイルもハイリスクなものとも一部では報じられており、為替リスクの怖さをまさかゴーン氏が理解していなかったとは言い訳にもならない。

 いずれにせよ他の役員や一般社員が日産にリスクの保証をしてほしいと依頼をしたところで、何をバカなことを言ってるのかと鼻で笑われて終わる話だろう。

 リスクの付け替えについてゴーン氏は、担保を個人で負担するには日産を辞めて退職金を受け取るぐらいしか対応方法はなかった、しかし日産を辞めるわけにはいかなかった、とも法廷で発言している。自分勝手なムチャクチャな説明ぶりにはあきれるしかないが、この取引は後に証券取引等監視委員会(SESC)に問題視され、結局は日産から再度ゴーン氏の元に戻されることになる。

 リスクの付け替えで損が発生してもゴーン氏が負担する約束だった、そして実際に損は発生していなかったというが、そもそもリスクの付け替え自体が自身の権力を利用したゴリ押しではないのか。損失発生の有無にかかわらず、言い訳の余地はないように見える。有価証券報告書の虚偽記載を問題にするのなら、退職金よりもこの取引が記載されていなかった事の方がよっぽど問題ではないのか。

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