仮想通貨とデジタル通貨KAMIYAMA Reports(2/3 ページ)

» 2020年02月06日 16時18分 公開
[神山直樹日興アセットマネジメント]
日興アセットマネジメント

投資対象としての仮想通貨は金投資と似ている(通貨ではない)

 ビットコインなどの仮想通貨は投資対象として考えてよいだろうか。各仮想通貨はそれぞれ性格が異なるので一言では言いにくいが、ビットコインへの投資は金投資と似ている。

仮想通貨の価格推移(ドル建て、2018年2月を100とする)

 まず、ビットコインは、マイニングという労働(ブロックチェーンにおける取引認証のためのコンピューター資源を利用)を行う対価として価値を持たせた暗号資産を配布した。アダム・スミスやマルクスなどの時代に経済の基本と考えられた労働価値説(今となっては労働で商品価値が決まるという説はあまり採用されない)に近い考え方で、価値を感じさせるというアイデアが人気を博した。しかも、掘り出す総量があらかじめ決められており、ある時点から生み出されないことがわかっている。それが希少性を感じさせ、もうひとつの価値の源泉と考えられた。

 仮に発行総量が決まっている「通貨」があるとすれば、特定の国や地域がこれを使うことは金本位制となることに似ている。金本位制が管理通貨制度に取って代わられたのは、経済成長が金に裏付けられた通貨の発行量によって制約されやすくなるためなので、総量が決まっている「通貨」は、現実的ではない。

 逆に言えば、総量が決まったことで希少性を感じさせる仮想通貨への投資は金投資と似ている。米国の経済悪化で米ドルの価値下落が心配される場合、価値保存の手段として金や別の希少性・価値保存性のある何かの価値が上がりやすいからだ。しかし、このような「逃げ場」としての資金移動は、投資の本質とは考えにくい。

 仕組みとして仮想通貨が今後安定するとしても、分散対象としての保有であって、投資の中心ではない。

 このところ、仮想通貨の価格の上下動が激しい理由は、仕組みとしてどれがもっとも望ましいのか(発行量が増え続けるべきかなど)、その上でどれがもっとも人気があり入手しやすく決済しやすいかといった点がわからないからだ。淘汰される仮想通貨は今後取引システムなどが不安定になる恐れもある。また、このような方法がマネーロンダリングなどに使われる恐れがあり、さまざまな規制の対象になる可能性もあるため、仕組みがどのように落ち着くか予想が難しい。しかし、長期的に見れば“勝ち組”の仮想通貨については、ボラティリティの低下が期待される。

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