世界で合計600万部の大ベストセラーとなった『嫌われる勇気』と『幸せになる勇気』。「人間関係の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と語るアルフレッド・アドラーの思想を、哲人と青年の対話形式で考えるこの二部作は、多くの読者の悩みに答える内容となっている。
この二部作を、仕事の悩みを解決するために読みたいと考える人は、少なくないだろう。企業では一般社員をはじめ経営者、管理職であってもそれぞれの悩みを持って働いている。アドラーはその悩みにも答えているものの、抱える問題を解決するためには、アドラーの思想を正しく読み解く必要がある。共著者の1人で哲学者である岸見一郎氏が、そのポイントを語った。
――『嫌われる勇気』と『幸せになる勇気』はビジネス書としても読まれていると思います。経営者をはじめ、企業の関係者からはどのような反響がありますか。
企業のリーダーから「『嫌われる勇気』を読んでよく分かりました」と言われたときに、「本当かな?」と思うことがあります。ここに書いていることを誤解されているのではないかと思うからです。
というのも、企業研修に呼ばれ職場の対人関係というテーマで話すことがあります。「部下が思うように動かない」といった悩みが多いです。
――『嫌われる勇気』を正しく理解した場合、経営者やリーダーは部下に対してどう接するべきなのでしょうか。
まず、部下を「動かす」ことはできません。部下の立場の人には上司の顔色をうかがわずに、「それは違うのではないですか」と言える勇気を持ってほしい。「人に嫌われなさい」と言っているわけではなく、嫌われることを恐れずに、はっきりものを言うことの大事さを哲人は語っています。
逆に上司の場合は、嫌われる勇気を持ってはいけません。上の立場に立つ人は、部下の話を聞いて、きちんと説明して、部下が納得できるように働きかけるべきです。つまり、自由に話をできる組織を作っていく必要があるのです。「部下に嫌われても言うべきことは言わないといけない」というような自信を上司は持ってはいけないのです。
リーダーがこの本を読んだら、おそらくこれまでとは変わらざるを得ないでしょう。リーダーは役割でしかなく、若い人より偉いわけではありません。そのことを理解したリーダーの率いる職場は、部下が自由に自分の発想で動けるようになります。
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