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『嫌われる勇気』著者、アドラー心理学の第一人者が語る組織論「部下を思い通りに動かそうとするのは間違い」『嫌われる勇気』著者の仕事術(後編)(2/4 ページ)

» 2020年02月08日 04時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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男性が「対等」を理解できていない

――なかなかそのような職場は多くはないと思います。リーダーの考え方を変えるために有効なアドラーの言葉はありますか。

 そうですね。アドラーは「対等」というキーワードを使います。著作の中で「一緒に仲良く暮らしたいのであれば、互いを対等の人格として扱わなければならない」とはっきり言っています。この言葉はいまでこそ当たり前のように聞こえるかもしれません。でも、企業の中でも、家庭でも、学校でも、本当に「対等」な関係ができているのかというと疑問です。

 「男が上」で「女が下」と言えば、いまでは大変なことになります。でも、実際には分かっていない人がたくさんいます。「対等」についての男性の意識はまだ低いと感じています。

――家庭ではどんなことが気になりますか。

 私は若い女性に、「結婚したら家事は手伝う」「子育てを手伝う」などと言う男性とは結婚してはいけないと言っています。「一緒にやるよ」が正しいですね。自分が外で働いて、妻は家で子育てをするといった、親の世代を見てインプットされた考え方から抜け出せない人がたくさんいます。

 教育でも、子どもよりも親が上、先生が上と思っている人が多くいます。子どもを頭ごなしにしかりつけることは、対等じゃないでしょう。でもそういうことは、どこでも行なわれています。

――スポーツの世界でも、指導者のパワハラなどがよく問題になりますよね。

 「高校球児」という人がいますが、子どもではないですね。野球以外でも、オリンピックに出場するような選手を、頭ごなしにしかりつけるのはおかしいと思いませんか。しかりつけることが教育だと思っている人は、自分が偉いという感覚から抜けられないのでしょう。

 監督やリーダーなど、組織で上の役職についた人は、偉くなったと勘違いしてしまいます。偉くなったわけではないのです。仕事は増えますが。そのことを理解して、対等な関係を築くことができるリーダーがいれば、チームや組織は伸びていくと思います。

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