僕が知事・市長のときには、年上の部下にはもちろん、年下の部下に対しても、「さんづけ」で呼び、丁寧語で話していました。もちろん、組織内においては「橋下さんはとっつきにくい」などと、人間関係に少し壁があるという印象を持たれていたことも事実です。この辺はバランスですね。
そして、人を動かすことにおいて、最も悩みが深いのは、部下の評価の仕方だと思います。これには「目標の段階分け」による「評価の見える化」という手法が有効です。
「今のあなたはAという目標段階にいるが、次はBという目標段階、その次はCという目標段階」……というように、どのように仕事をレベルアップしていくべきなのか、その道筋を明確に示しながら、今の段階での評価をします。部下は目の前の仕事だけを評価されても、その先にどのようなレベルを目指すべきなのかが見えなければ、納得できないし、これから何を目指すべきなのかも明確に定まりません。
目の前の仕事を評価するだけでは不十分で、常に俯瞰的に見たときにどう位置付けられるかを評価すること、その位置付けが部下にも分かる形にしておくことが重要です。これが「評価基準の見える化」というものです。
もしかしたら、自分の仕事に自信たっぷりな部下もいるかもしれませんが、明確に目標を段階分けし、その部下が、今どの段階にいるのかを示せば、「意外とできていなかった」と気付かせることもできるでしょう。見える化は、部下が自分を客観視する手助けになるわけです。
一番よくないのは、個人の主観に基づいて評価することです。主観は多分に感覚的なものであり、自分にはそのつもりがなくても、部下の間では「自分は不当に低く評価されている」「あの人は贔屓(ひいき)されている」といった不満がしばしば起こる。また、上司としての自分自身も、明確な仕事のゴールを示すことなく、その場その場の小言が多くなってしまう。主観による評価は、上司と部下双方にとって悪循環になってしまいます。
将来の道筋が見え、部下はどのように自分のレベルを上げていくべきかを理解し、全体の道筋の中で今の自分の位置づけがわかるような評価基準があれば、こうした部下の不満や自分自身のマネジメント不全によって、組織に不協和音が生じることを避けることができるでしょう。
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