労使の攻防は19年の12月に入っても続いたが、労使の意見が対立したまま越年すると、20年4月の施行も危うくなる。そこで12月24日の労政審で公益代表委員から急きょ出されたのが今回の法律案要綱と同じ内容の見解だった。
法律案では以下の内容になっている。
1.労働者名簿、賃金台帳および解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類の保存期間は5年間に延長する
2.付加金の請求を行うことができる期間は、違反があった時から5年に延長する
3.賃金の請求権の消滅時効期間を5年間に延長し、消滅時効の起算点は請求権を行使することができる時(客観的起算点)とする
4.経過措置として、労働者名簿等の保存期間、付加金の請求を行うことができる期間、賃金(退職金を除く)の請求権の消滅時効期間は、当分の間、3年間とする
付加金とは、割増賃金などを支払わない使用者に対して違反があった時から、労働者の請求によって未払金のほか、これと同一額の支払いを裁判所が命じることができる制裁金のことだ。一般的には割増賃金と同額の付加金を請求できる。「権利を行使することができる時」とは「各賃金支払日」を指す。
つまり、今回の法改正案では消滅時効期間などは民法に合わせて5年とする一方、使用者側の意見を踏まえて当分の間3年とした折衷案だった。当分の間とは、法律案では「法律の施行後5年を経過した場合に」検討を加え、必要な措置を講ずるとしている。ということは20年4月から3年に延長され、25年以降に5年に延長される可能性がある。
使用者側の本音は言うまでもなく、2年から5年に延びると支払う残業代が莫大な金額になり、それは困るというものだ。厚労省は毎年「監督指導による賃金不払残業の是正結果」を公表している。18年度に是正指導を受けて100万円以上の割増賃金を支払った企業は1768社。支払い総額は約124億5000万円だ。対象労働者数は約12万人。1企業あたりの平均支払い額は704万円、労働者1人あたり10万円となっている。
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