一方、大手医療・介護サービス会社の人事担当者は「クライアントの病院で働く医療事務と介護施設や訪問介護に従事している社員が全国に1万人超いるが、シフト勤務の対象者も多い。訪問介護の社員はタブレットを持たせ、利用者宅に何時に入り、何時に終了したという報告をさせているが、それでも時折、ケアレスミスで労働時間を完璧に把握できないこともある。その結果、3年や5年前にさかのぼって未払い賃金を請求されることになりかねない」と不安を隠さない。
20年4月から大企業に続いて中小企業の「時間外労働の罰則付き上限規制」が施行される。行政の監視も今まで以上に厳しくなり、労働基準監督署から違法状態の指摘を受けると企業の負担も今まで以上に重くなる。さらに退職後に提訴されることが多い「名ばかり管理職」問題も要注意だ。管理監督者問題を含めて適正な人事・賃金管理の在り方がこれまで以上に厳しく問われることになる。
溝上憲文(みぞうえ のりふみ)
ジャーナリスト。1958年生まれ。明治大学政治経済学部卒業。月刊誌、週刊誌記者などを経て独立。新聞、雑誌などで経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。『非情の常時リストラ』で日本労働ペンクラブ賞受賞。
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