現在、出回っているフェイク情報は多種多様だ。最もよく語られているのは、すでに述べたように、新型コロナウイルスが中国が武漢ウイルス研究所で開発していた生物兵器だとの見方だ。
ただこれは陰謀論だと考えていい。そもそもこの情報は、センセーショナルな記事タイトルが多い英メトロ紙などで報じられて話題になった。
さらに陰謀論を報じて批判されることもある保守系の米ワシントン・タイムズ紙が、「コロナウイルスは中国バイオ兵器の研究所とつながっているかもしれない」と大々的に報じ、保守系の議会議員が記事タイトルを拡散させるという事態になった。もっとも、記事の根拠は中国のバイオ兵器を研究していたイスラエルの元軍人によるコメントで、そのコメントも「武漢ウイルス研究所は、少なくとも補足的にバイオ兵器の研究開発をしてきたかもしれないが、中国のバイオ兵器の施設としては主要なものではない」という内容だから、同紙の記事はかなり偏向していると言わざるを得ない。
すでに述べた通り、米情報関係者の中にもこの手の話を拡散させようとの思惑も見え隠れしている。それに乗っかるメディアがあるのも不思議ではない。ライバル国である中国の評判を落とす機会だと見ている人も少なくないからだ。米議会のトム・コットン上院議員などは、「そう遠くない“研究所”から始まった可能性がある」と公然と中国を厳しく批判しており、そのコメントもSNSで広く拡散された。米国で報じられているからといって、そのままうのみにはできないのである。
また欧米在住の中国人医師らも、中国政府を批判すべく「人工的に作られた」というような発言をしている。
さらに言えば、当初言われていたように、コウモリを食べたことによってウイルスに感染したという話も証明されていない。武漢の生鮮市場にコロナウイルスが存在する環境的な汚染があったことや、コウモリからウイルスが発生したこと、さらに、そこで感染があったという可能性は高いが、それ以上ははっきりと分かってはいない。
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