新型コロナでデマ拡散「インフォデミック」に踊らされない“リテラシー”とは世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2020年02月27日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

フェイク情報にだまされないためのリテラシー

 まず、ニュースや情報に懐疑的になること。はじめからニュースが正しいと期待してはいけない。その上で、一歩立ち止まって、きちんと情報源を調べてみること。

 またフェイクニュースに絡む現実を知っておくことも必要だろう。例えば、今回の新型コロナウイルスでは情報が錯綜しているという認識を持っていることが大事である。そして最後は、人は感情に訴えるような記事を信用しがちであるという事実。そういう情報も「シェア」する前に一瞬考えてみたほうがいい。

 つまり「リテラシー」が必要だといえる。

 一方で、SNS側もこうしたフェイクニュースに惑わされないよう対策をとっている。FacebookやTwitter、YouTubeなどは、WHOやCDC(米疾病対策センター)と協力し、コロナウイルスに関する情報では、明らかな偽情報などを上位に表示しないようにしているという。Facebookは明らかな偽情報は削除している。例えば、漂白剤を飲めば新型コロナウイルスによる肺炎の治療になる、といったフェイク情報だ。

 何はともあれ、中国政府がきちんとした情報を公開していないことや、そもそも普段から情報が徹底的に管理・検閲されているという事実が、フェイクニュース拡散を後押ししているといえる。特に、最初に肺炎に似た疾患について訴えていた医師8人を拘束したことが不信感につながっている。この事実も重い。

 これからも世界的なニュースについては、SNSなどによって情報が錯綜し、混乱を引き起こす可能性がある。

 こうしたフェイク情報にだまされないためにも、特にビジネスパーソンにはリテラシーという「ワクチン」が必要なのかもしれない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


お知らせ

新刊『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)が1月21日に発売されました!

 イラン事変、ゴーン騒動、ヤバすぎる世界情勢の中、米英中露韓が仕掛ける東アジア諜報戦線の実態を徹底取材。

 『007』で知られるMI6の元スパイをはじめ世界のインテリジェンス関係者への取材で解き明かす、東京五輪から日本の日常生活まで脅かすさまざまなリスク。このままでは日本は取り残されてしまう――。

 デジタル化やネットワーク化がさらに進んでいき、ますます国境の概念が希薄になる世界では、国家意識が高まり、独自のインテリジェンスが今以上に必要になるだろう。本書では、そんな未来に向けて日本が進むべき道について考察する。

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.