「当時は、パワハラという概念がなかったんです。上司が自分の感情で怒鳴りつけたり、怒ったらモノを投げつけるとか当たり前でした。会社の上役に上司が怒られると、上から下にそのイライラを全部ぶつけられました 。他の上司にパワハラを相談すると、『僕がなにすればいいわけ?うじうじして悩むくらいなら前向きに働いた方がいいじゃん』と言われて、泣き寝入りするしかなくなった。それで鬱になってしまって、結局自己都合で試用期間のうちに辞めさせられました」
試用期間中に退職したため、失業保険も下りなかった。退職後必死に転職先を探し、なんとか就職先の編集プロダクションを探したが、紙媒体の崩壊とともに入社して1年ほどで会社の経営が傾き、リストラに遭ってしまう。
終身雇用が当たり前の父親は、自分の窮状を理解してはくれない。
『お前辞めてどうするんだ。次が簡単に見つかると思ってるのか』と言われた。「別にあなたたちのスネかじっていきていくつもりないから。余計なお世話なんだけど」と、反発するしかなかった。
出版関係のハードワークに耐えかねて、マーケティング会社に転職したこともある。しかし、そこもご多分に漏れずにブラック企業だった。締め切り日が近づくと休日出勤や深夜残業当たり前で気がついたら、会社に何十連勤もしていた。その職場では8年近く勤務したが、そんな生活は心身を徐々に蝕んでいき、出社が困難になってしまう。
美緒さんは、転職で挫折を繰り返すうちに、いつしか正社員で働くことに恐怖を覚えるようになっていった。正社員=激務という負のイメージがつきまとうようになったのだ。そこからは、定時に上がれる時給の事務の派遣社員として働くようになり、現在に至る。
「今は諦めの境地に入ってるんです。もう、正社員で働くのは考えられないですね。また正社員になると、打ちのめされてしまうのではないかという恐怖がある。正規で働いて残業しすぎて体調崩しているので、同じようなことが起こるんじゃないかと思うんです。それならまだ『非正規でも働いている自分』を受け入れるほうがいい。正社員になると、鬱になったり、朝起きて会社に行けなかったりするかもしれない。激務のストレス耐性がないんでしょうね」
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