クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

いまさら聞けない自動車の動力源の話 ICE編 1池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2020年03月02日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

予圧縮と着火の仕組み

 さて話を内燃機関に戻そう。自動車における内燃機関とは一般的に、ガソリンや軽油を燃焼させるシステムであると説明したが、この2つは実は燃焼の基礎的な仕組みが全く違う。

 それでも共通点もある。内燃機関は、予圧縮、つまり燃やす前に圧縮してやることで、より多くの力が取り出せるという部分だ。エネルギー回収の面だけで見れば圧縮は高ければ高い方がいい。しかしエンジンの強度限界もあるし、燃焼がコントロールできる範囲でないと困る。そのあたりでガソリンとディーゼルは道が分かれていくのだ。

 ガソリンエンジンは、ガソリンと空気を適切な比率(理論混合比)に混ぜた混合気に、点火プラグで着火するシステムだ。かつてはキャブレターで、現在はインジェクションを用いて混合気を作る。伝統的には、燃焼室に入るまえに混合気が作られ、燃料と空気が混ざった状態で燃焼室に送り込まれる。

現代のガソリンエンジンの仕組みを発明したドイツのエンジニア、ニコラウス・アウグスト・オットー

 この仕組みを発明したドイツのエンジニア、ニコラウス・アウグスト・オットーにちなんで、オットーサイクルエンジンとも呼ばれるが、一般的には燃料の名称でガソリンエンジンといわれることの方が多い。ガソリンエンジンでは、原則的に、燃料と空気を予め混ぜてプラグで着火する。この方式を予混合といい、メリットとしては空気とガソリンの混合をコントロールしやすいし、予め混ぜるからよく混ざる。

 欠点は、燃料と空気が最初から混さっているので、何か問題が起きると意図しないタイミングで燃焼が始まってしまうことだ。本来は、ピストンが一番上にある上死点付近で燃焼ピークを迎えたい。そのため、実際には着火から燃え広がるまでの時間を考慮して、上死点前で点火を行うが、その制御の狙いは、あくまでも上死点で高い圧力を得ることだ。

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