さて話を内燃機関に戻そう。自動車における内燃機関とは一般的に、ガソリンや軽油を燃焼させるシステムであると説明したが、この2つは実は燃焼の基礎的な仕組みが全く違う。
それでも共通点もある。内燃機関は、予圧縮、つまり燃やす前に圧縮してやることで、より多くの力が取り出せるという部分だ。エネルギー回収の面だけで見れば圧縮は高ければ高い方がいい。しかしエンジンの強度限界もあるし、燃焼がコントロールできる範囲でないと困る。そのあたりでガソリンとディーゼルは道が分かれていくのだ。
ガソリンエンジンは、ガソリンと空気を適切な比率(理論混合比)に混ぜた混合気に、点火プラグで着火するシステムだ。かつてはキャブレターで、現在はインジェクションを用いて混合気を作る。伝統的には、燃焼室に入るまえに混合気が作られ、燃料と空気が混ざった状態で燃焼室に送り込まれる。
現代のガソリンエンジンの仕組みを発明したドイツのエンジニア、ニコラウス・アウグスト・オットー
この仕組みを発明したドイツのエンジニア、ニコラウス・アウグスト・オットーにちなんで、オットーサイクルエンジンとも呼ばれるが、一般的には燃料の名称でガソリンエンジンといわれることの方が多い。ガソリンエンジンでは、原則的に、燃料と空気を予め混ぜてプラグで着火する。この方式を予混合といい、メリットとしては空気とガソリンの混合をコントロールしやすいし、予め混ぜるからよく混ざる。
欠点は、燃料と空気が最初から混さっているので、何か問題が起きると意図しないタイミングで燃焼が始まってしまうことだ。本来は、ピストンが一番上にある上死点付近で燃焼ピークを迎えたい。そのため、実際には着火から燃え広がるまでの時間を考慮して、上死点前で点火を行うが、その制御の狙いは、あくまでも上死点で高い圧力を得ることだ。
- 暴走が止まらないヨーロッパ
英政府は、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売を、ハイブリッド(HV)とプラグインハイブリッド(PHEV)も含め、2035年に禁止すると発表した。欧州の主要国はすでに2040年前後を目処に、内燃機関の新車販売を禁止する方向を打ち出している。地球環境を本当に心配し、より素早くCO2削減を進めようとするならば、理想主義に引きずられて「いかなる場合もゼロエミッション」ではなく、HVなども含めて普及させる方が重要ではないか。
- 水素に未来はあるのか?
「内燃機関が完全に滅んで、100%全てのクルマがEVになる」という世界は、未来永劫来ないだろう。そのエネルギーミックスの中にまさに水素もあるわけだが、FCVにはいろいろと欠点がある。しかし脱化石燃料を目標として、ポスト内燃機関を考え、その候補のひとつがFCVであるとするならば、化石燃料の使用を減らすために「化石燃料由来の水素」に代替することには意味がない。だから水素の製造方法は変わらなくてはならない。また、700気圧という取り扱いが危険な貯蔵方法も変化が必要だ。
- トヨタがいまさら低燃費エンジンを作る理由
トヨタは2021年までに19機種、37バリエーションものパワートレインの投入をアナウンスしている。内訳はエンジン系が9機種17バリエーション、トランスミッション10バリエーション、ハイブリッド系システム6機種10バリエーションと途方もない。なぜいまさらエンジンなのだろうか?
- 内燃機関の全廃は欧州の責任逃れだ!
「ガソリンエンジンもディーゼルエンジンも無くなって電気自動車の時代が来る」という見方が盛んにされている。その受け取り方は素直すぎる。これは欧州の自動車メーカーが都合の悪いことから目を反らそうとしている、ある種のプロパガンダだ。
- 電動化に向かう時代のエンジン技術
ここ最近、内燃機関への逆風は強まるばかりだ。フランスやドイツ、あるいは中国などで関連する法案が可決されるなど動きが活発である。それにメーカーも引きずられ、例えば、ボルボは2019年から内燃機関のみを搭載したクルマを徐々に縮小していくという。
- ガソリンエンジンの燃費改善が進んだ経済的事情
ここ10年、自動車の燃費は驚異的に改善されつつあり、今やハイブリッドならずとも、実燃費でリッター20キロ走るクルマは珍しくない。なぜそんなに燃費が向上したのだろうか? 今回は経済的な観点から考えたい。
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