クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

いまさら聞けない自動車の動力源の話 ICE編 1池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)

» 2020年03月02日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

ディーゼルエンジンの仕組み

ディーゼルエンジンの発明者であるドイツのエンジニア、ルドルフ・ディーゼル

 一方のディーゼルはどうかといえば、こちらは燃料にガソリンではなく軽油を用いる。ドイツのエンジニア、ルドルフ・ディーゼルの発明で、不思議なことにこちらは一般的にも発明者の名前でディーゼルエンジンと呼ばれる。

 ディーゼルエンジンがガソリンエンジンと最も違う部分は、予混合を行わないことだ。つまりエンジンが圧縮行程にあるとき、シリンダー内にあるのはただの空気であって、燃料は混ざっていない。絶対に早期燃焼は起きないから、圧縮比を高くすることができる。それが何を意味するかといえば、エネルギー効率が高くなるのだ。

 昨今の環境規制でやり玉に挙げられている温室効果ガスの代表、CO2の発生量は概ね燃料消費に比例する。燃料を動力に変換する効率が高ければ、それだけCO2の発生を抑えることができる。だから少し前まで、欧州ではCO2対策のエースはディーゼルだと主張していたのである。

 ガソリンの場合点火プラグで火を着けて混合気を燃やしていたのだが、ディーゼルの場合は圧縮工程では燃料が混じっていない純粋な空気である。しかし先に述べたように、空気は圧縮すると温度が上昇する。17分の1とかに圧縮すると温度は軽く200度くらいまで上がる。そこへ燃料を噴射すれば圧縮された空気の高温で自己着火が起こり瞬時に燃える。ガソリンエンジンで点火のタイミングを決めているのは点火プラグだが、ディーゼルの場合は燃料を噴射するインジェクターがその役務を担っている。

世界に前例がないマツダの低圧縮ディーゼルユニット、SKYACTOV-D 2.2

 しかしながら、それだけ高圧に圧縮された燃焼室に燃料を噴射するには、非常に高圧で噴射できるインジェクションシステムが必要で、だから高価になる。また圧縮比が高いので、エンジンそのものも頑丈に作らなければならない。それもまたコストを押し上げる。だからディーゼルエンジンは高いのだ。

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