それに拍車を掛けるのが、働き方改革の名を借りた、国の「フリーランス礼賛」と今国会で提出されている「高年齢者雇用安定法」の改正案、すなわち「企業に70歳までの就業機会確保を義務」にする法案です(今回は努力義務だが義務になる方針)。
政府は「70歳雇用」の選択肢として、現行の定年延長、定年廃止、契約社員などでの再雇用の3パターンに加え、「他企業への就職支援」「フリーランスとして働く人への業務委託による支援」「起業支援」「社会貢献活動などへの支援」の選択肢を提示。
健康機器メーカーのタニタが、社員が「個人事業主=フリーランス」として独立するのを支援する新しい制度を導入して物議を醸しましたが、どんなハサミも使いようで刃になります。つまり、悪知恵を働かせて「雇用する責任」を放棄しようと思えばどうにでもなる「企業の雇用する義務を放棄できる施策」がどんどん進められているのです。
「え? でも、それって若者には関係ないでしょ?」
こう思われるかもしれませんが、70歳まで働ける法律を厳しくすればするほど、シニアだけではなく、全ての働く人たちの雇用環境が厳しさを増す可能性が高いと覚悟した方がいい。
本来「会社」とは、単なる市場労働(働いて賃金を得る)の場ではなく、社会組織であり、共同体であり、そこで働く人たちが安全に暮らせるようにすることを最大の目的とする社会的リソースなのに、今回の新型コロナ対応を考えれば、悲しいかな「会社」の役割が変わっていくのです。
どうか国は「コロナ関連死」なるものが出ないよう、今からでも遅くないので徹底的な財政支援をしてもらいたいです。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)。2019年5月、新刊『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)発売。
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