トヨタはすでにカローラやクラウンでDCM(車載通信機)を標準搭載し、フロントカメラ情報を含む多くの情報をリアルタイムでクラウドへ送るシステムを導入している。つまりクルマは路上を走り回るセンサーであり、街にとっては、ある意味移動式の情報集取装置だとも考えられる。プライバシーのガイドラインをしっかり設定すれば、セキュリティや弱者保護に用いる監視カメラの役割も十分にこなせるだろう。
そう考えると、情報インフラ企業としてのNTTと、人の移動インフラ企業としてのトヨタが、ウーブン・シティを核に据えて協業することは、ある意味当たり前の話にみえてくる。
豊田社長は、2018年のCESで「トヨタはモビリティカンパニーへと変わる」と宣言した。それを今トヨタは別の言葉で再定義しようとしている。「クルマは社会システムの一部になる」だ。つまりクルマが社会とつながることによって、トヨタはモビリティカンパニーへの脱皮を遂げるということであり、とすれば、日本社会全体の情報流通を担うNTTとタッグを組むことは当然の流れということになる。
さてこうした取り組みに際して、トヨタはクルマづくりそのものも変えていくという。モデルチェンジ概念を変えるのだ。具体的には「ソフトウェア・ファーストなクルマづくり」を目指すという。それによってクルマの買い換えタイミングも変わる。フルモデルチェンジでは、クルマのハードウェアを大幅に変更する。当然ユーザーがこのアップデートの恩恵にあずかるにはクルマを買い換えるしかない。しかしマイナーチェンジは、ハードを変えることなく、ソフトウェアアップデートで、新機能を選ぶことができる方向性だ。
テスラがすでに行っているファームウェアアップデートと同じ考え方だ。しかしながら現状の日本では、国交省の行政指導で、型式認定取得時になかった機能を追加することはできないことになっている。テスラは行政指導は法律ではないとして無視している。それで済むならばルールを破った者勝ちだ。行政の態度は、「行政指導はルールなのかルールじゃないのか」について、日本のメーカーと外資に対してダブルスタンダードになっており、その結果、ルールを守り続けるがゆえに、ユーザーから「日本のメーカーは顧客優先では無い」と指弾される原因になっている。
トヨタは国に働きかけてこのルールを変えるつもりなのだろう。いまや役所は、日本企業が世界で戦う際の足かせになりたくない気持ちが強いので、正しいアプローチを取る限り扉は開かれる目算が高い。
そうやって変化していくことは、トヨタがこれまでの伝統を捨てること、過去を否定することなのかというとそうではない。ハードウェアとしてのトヨタ車がなぜ支持されているかについて、トヨタは3つのアドバンテージがあると自己評価している。
こうしたアドバンテージをまとめて、積み上げてきたハードの強みとした上で、ソフトウェア・ファーストを上位概念として重ねる。これによって、クルマづくりを次のフェーズに変革していくと説明している。
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