クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

トヨタとNTTの提携 途方もない挑戦の始まり池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2020年03月30日 07時10分 公開
[池田直渡ITmedia]

 当然クルマとインフラの間では情報のやりとりが求められるが、それは1対1の情報のやり取りではない。多対多で大量のデータがやり取りされるだろうし、そのデータはおそらくブロックチェーンで管理される時系列な情報となるだろう。その膨大な情報を管理分析するのは当然AIの仕事になる。

 で、それで一体何が起きるのか? それはもうおそらく我々の想像の及ばないレベルでいろんなことが変わるだろう。先程の薬の話と同じで、リアルタイムで取得される情報からは今までコントロールできなかった膨大な事象が解決されていくに違いない。

センサーとしての自動車が集めた情報(トヨタ資料より)

 想像の及ぶ範囲だけいくつか書き出してみよう。クルマの流れと信号のシンクロひとつ取っても、もっと能動的にコントロールできる。

 現状は、誰もいない田舎道の信号でも赤なら停止していなくてはならないが、街全体が無数のセンサーを持ち、移動体に関する情報を総合的に判断してコントロールできれば、ほかの交通因子と干渉しないタイミングであるにもかかわらずわざわざクルマを止める必要はない。信号を青にして進めばいい。交差する道路の交通量に応じて、どちらをどのくらい流すかもリアルタイムデータに基づいて最適化できる。そうやってクルマの発進停止が減れば、エネルギー的にも環境的にもメリットがある。交通違反も交通事故もクルマが通信を通じて情報と知性を持てば起こらなくなるか激減するだろう。

 さらにいえば、スマホのスケジュール管理と連動して、いつ誰がどこへ移動したいかも街単位で計画することができるだろう。例えばピークの時間にカーシェアのクルマを必要な場所に移動させて用意したり、それで足りなければ個人のスマホに別の交通手段をサジェストしたりすることだってできる。何なら手段や時間を変えることで、オフピークに協力する人には料金的なインセンティブを付与することも簡単だ。

 そういう無数の未来の可能性を実験するための都市がウーブン・シティであり、これだけの規模の実験フィールドはおそらく日本にこれひとつになるだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.