クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

トヨタとNTTの提携 途方もない挑戦の始まり池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

» 2020年03月30日 07時10分 公開
[池田直渡ITmedia]

 先日友人の薬学博士と話した時に面白い話を聞いた。彼は筆者が書いたブロックチェーンの記事を読んで、実は医薬の世界でも情報の蓄積が途切れることが大きな問題になっているというのだ。例えば、医師が診察して、投薬の処方箋を書く。薬局でこれらを処方するところまでは情報のチェーンはつながっているのだが、そこから先が途切れてしまう。

 患者が本当にその薬を飲んでいるかどうかは自己申告に頼るしかなく、本当はタンスに仕舞い込んでいながら、「ちゃんと飲んでいる」と言われればそれを前提に次の処方箋が書かれることになる。

 医者は症状が緩和されないことを見て、薬の投与量を増やす。そうやってどんどん大量の薬が処方されて、使われないまま大量にタンスに死蔵され、各自治体は健康保険料の負担に苦しみ、健康保険の不足を税で補填(ほてん)しているため、結局増税につながっていく。

 だからこの薬にマイクロチップを入れて、胃酸と反応して発電し、情報を飛ばす技術が生み出された。これでいついくつ服用したか、ほかにどんな薬と一緒に服用したかが全て分かる。普通に考えてこのチップは人体に影響を与えないよう考慮されているのだろう。

 まだ研究レベルの話らしいが、こういう情報技術によって、人のモラル任せでは解決できない諸問題が解決できることが世の中にはおそらく無数にあって、だからこそ情報化技術は「社会の発展」に寄与できる目算が大きい。

コネクティッドの未来都市 ウーブン・シティ

 例えばトヨタは今年のCESで、トヨタ自動車東日本 東富士工場の跡地に、街が丸ごとコネクティッドでつながる「Toyota Woven City」(トヨタ・ウーブン・シティ)を建設することを発表した。今回の記者会見の席上でも、これについて豊田社長は大変興味深い発言をしている。

【訂正:12:10 ウーブン・シティ建設地の元所有企業が誤っておりました。お詫びし訂正いたします。】

実証都市「Woven City」のイメージ(トヨタ資料より)

 ウーブン・シティのひとつの特徴は「原単位」の考え方を導入したということだと思います。まずe-Paletteという自動運転車を作りました。通信がアナログの時代からデジタルに変わり、どんどんクルマに情報を入れていくのですが、クルマが全部インフラを背追い込んで、本当に安全な事故無しの生活ができるんだろうか? そしてそれが多くの人に移動の自由を与える、アフォーダブル(安価)なものになるのだろうかと考えると、ある程度インフラ側にやってもらうことも必要だなと(以下略)

 ここで出てくるウーブン・シティにおける原単位とは、道路インフラをクルマ専用、歩行者専用、人とモビリティの混在路、物流専用路にそれぞれ分けつつ、1単位のセットとして扱い、それを原単位としてブロックのように街を構築するという考え方だ。

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