元SMAP中居正広さんの事務所独立から考える、男性アイドルグループビジネスの「寿命」と今後SMAPは「長寿アイドル」の祖?(5/5 ページ)

» 2020年03月31日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]
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カリスマの「穴」を埋められるか

 彼の一言でもめ事も丸く収まり、彼の許しなくては何事もことは進まない。例えば所属タレントの結婚などについて、基本はビジネス面が優先され、彼の“許し”なくしては認められなかったといいます。また、社内外における影響力の大きさは、その求心力の裏返しでもありました。ジャニー喜多川氏亡き後に相次いでいる、人気グループからのメンバー脱退やそのうわさ、そして人気メンバーの結婚発表等々。これらはジャニー氏亡き後の組織求心力の低下を表して余りあると思われます。さらには、タレントの起用について圧力行為があったとされる、テレビ業界からのタレコミによる公正取引委員会からの注意勧告。氏が健在の折には考えられないような出来事であったかもしれず、こんなところにも事務所の外部に対する求心力の低下がうかがわれます。

 そして組織求心力低下の究極が、今回の中居正広さんの退所です。中居さんがSMAP解散騒動の折に事務所に残った理由は、事務所の中心的グループのリーダーであったという責任感以上に、ジャニー喜多川氏への恩義であったといわれています。恩師の死から1年弱の時を経て事務所を去るという彼の決断は、長年事務所の中心的存在を務め後輩からの人望が厚いといわれる人物であるだけに、組織の結束というイメージ的な部分も含めて後輩たちに与える影響は決して小さくないでしょう。痛手は想像以上に大きいと思われます。

 ジャニー氏亡き後の後継体制は、氏の“めい”にあたるジュリー喜多川氏と元タッキー&翼の滝沢秀明氏の二頭体制であると伝えられています。ジュリー氏は元タレントマネジャー、滝沢氏は元タレントです。カリスマが築き上げてきたジャニーズ帝国がちょうどほころびを見せはじめた折も折、“現場上がり”の二頭経営が、課題である戦略的マネジメントをどこまで理解して、また同時にカリスマ亡き後の求心力を高められるのか。中居正広さんの退所は、退所発表後テレビで見かける機会も増え今後一層の活躍が期待できそうな中居さんとは裏腹に、ジャニーズ事務所の前途多難を感じさせるに十分すぎる出来事であるように思われます。

現場上がりの二頭体制で、カリスマの「穴」を埋められるか(出所:ロイター)

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時は旧大蔵省、自民党担当として小泉純一郎の郵政民営化策を支援した。その後営業、マーケティング畑ではアイデアマンとしてならし、金融危機の預金流出時に勝率連動利率の「ベイスターズ定期」を発案し、経営危機を救ったことも。06年支店長職をひと区切りとして銀行を円満退社。銀行時代実践した「稼ぐ営業チームづくり」を軸に、金融機関、上場企業、中小企業の現場指導をする傍ら、企業アナリストとしてメディアにも数多く登場。AllAbout「組織マネジメントガイド」役をはじめ、多くのメディアで執筆者やコメンテーターとして活躍中。


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