元SMAP中居正広さんの事務所独立から考える、男性アイドルグループビジネスの「寿命」と今後SMAPは「長寿アイドル」の祖?(3/5 ページ)

» 2020年03月31日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

「生身の人間」が故の落とし穴

 先に記したSMAPの解散騒動に端を発したジャニーズ帝国のほころびの数々は、男性アイドルグループという商品のライフサイクルを斟酌(しんしゃく)しない長期戦略の見誤りにあると、私は思います。SMAPを境とした売り出し方の変化は、続いて売り出した各グループの商品寿命をも長期化させ、「花形」期がいつまでも継続するという錯覚によってピークアウトへの移行が見えにくくなくなり、結果的に商品ライフサイクルにおける「金のなる木」期のグループばかりが増えてしまい、著しくバランスを欠く状況に陥ったというのが私の理解です。その引き金を引いたのがSMAP解散騒動だったわけです。

国民的アイドルだったSMAP(出所:ロイター)

 一般的に「花形」が「金のなる木」を経て「負け犬」になっていく理由は、商品を買う受け手側が人間であるが故の「飽き」とか「マンネリ」が主なものです。一方、商品の送り手側である企業はこの「飽き」や「マンネリ」を先送りすべく、新たな投資によって商品のマイナーチェンジを実施したり、あるいは抜本的にそれに代わる新たな商品の投入によって「飽き」や「マンネリ」を打破したりしていくのです。

 一般の商品の場合には、この「飽き」や「マンネリ」を感じるのが受け手である消費者サイドに限定されるわけですが、男性アイドルグループという商品は、商品そのものが生身の人間の集合体です。商品である彼ら自身にも同じメンバーのグループで活動することの「飽き」や「マンネリ」が必ず伴う、という問題があるのです。これこそが、ジャニーズ事務所のアイドルグループ戦略の落とし穴であったと私は考えています。

 そのグループであるがゆえの「飽き」や「マンネリ」が、グループ内のあつれきや見えないストレスを生んで、ある者は脱退という形で決着をつけたくなり、ある者は休養という形で日常から逃げ出したくなり、ある者は破壊的にグループを解散させようと動き、最悪のケースは蓄積されたストレスから犯罪的な行動に至ってしまう、ということになったのだと考えられます。男性アイドルグループ活動の戦略的長期化は、個々の人間としてメンバーを捉え切れていなかったという点に大きな盲点があったといえるでしょう。

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