Netflixが日本アニメの“盟主”を狙う真意――製作現場の脅威、それとも救世主?ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(3/4 ページ)

» 2020年04月08日 08時00分 公開
[数土直志ITmedia]

「完全オリジナル作品」にこだわるワケ

――今後の注目ラインアップをあらためて紹介してください。

櫻井: 19年末に配信を開始したNetflixオリジナルアニメシリーズ『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』は、国内外ですごく調子がいいです。アクション、SF、ファンタジーとも違うアニメの需要が、日本だけでなくアジア・世界にもあることが分かりました。今後も取り組んでいきたいジャンルですね。

photo 日本発のオリジナルアニメ製作への注力を表明したNetflix(筆者撮影)

 3月に配信を開始したオリジナルアニメ映画『オルタード・カーボン:リスリーブド』は、海外で非常に人気がある実写シリーズを原作に、スピンオフとしてアニメ化しました。本作は実写とアニメのユーザーを相互に開拓するブリッジコンテンツと位置付けています。実写シリーズの『オルタード・カーボン』を観(み)る人たちが、「アニメも観てみよう」「意外と面白いじゃん」と思ってくれれば。そこから似たような世界観である『攻殻機動隊』といった作品も観てくれればうれしいですね。逆にアニメを好きな人が『オルタード・カーボン』を見て、実写シリーズに興味を持ってもらうとか。実写・アニメの両方の橋渡しをするような作品を作ってみたいと思っています。

 後は4月23日に配信開始のオリジナルアニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』。こうした話題性がある大きなIPは引き続きやりたいと考えています。やはり大きなIPでは、視聴が多いという事実はありますので、この姿勢は変わらず持ち続けたいと考えています。

 最後に、完全なオリジナル作品です。最初の話にあった6組のクリエイターとの作品がこれに当たります。6人(組)ものクリエイターを発表したので、オリジナル作品がすごく多いと思われそうですが、実際は全体の8割がIP主導型の作品です。

――実際にすでに人気のある原作(大きなIP)だけで作品を作る方がヒットする確率の点でビジネスのリスクは小さいと思いますが、なぜオリジナルも手掛けるのですか。

櫻井: これから配信プラットフォーム間の競争が激化した時に、自分たちが原作権を持っていない作品は究極(的に言えば)、プラットフォーム上から無くなる可能性があると思っています。オリジナル(作品)のヒット率が低くなるのは承知していますが、ヒットしたときのメリットが大きい。実写ドラマのオリジナルシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のような成功作品をアニメでも出したいという気持ちがあります。

――オリジナルタイトルでは、『Sol Levante』という作品で高画質の映像である4K HDRの技術で手描きアニメに挑戦しました。具体的な成果は。

櫻井: 『Sol Levante』は手描きアニメで4Kをやった時にどのような成果があるのか、またどのような問題が発生するのか、他の作品・スタジオに汎用(化)できるのかを確かめる実験的な取り組みでした。僕たちは長期的に高画質な作品を提供するために、できれば4Kを広げていきたいと思っています。実際は想像以上に大変だったのですが、やれなくはない、時間をかければできるということは証明できました。プロジェクトから学んだノウハウを共有し、蓄積していくことが今後の課題です。後は費用対効果になると思います。

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