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» 2020年04月09日 07時20分 公開

資産運用で注目のゴールベースアプローチ 金融アドバイスは新たな付加価値となるか(2/3 ページ)

[斎藤健二,ITmedia]

運用成績よりもゴールの達成確率が重要

 ではいったんゴールを設定したあと、アドバイザーが行うアフターフォローとはどのようなものなのか。それは、年に1〜2回のフォローアップ面談で、ゴールを見直して運用方針を調整することだ。

 「ゴールの進捗状況をモニタリングして、達成確率が下がったら、上がるような方法をアドバイスする。例えば、毎月の積み立て金額を増やす、ボーナス時の積み立てを増やす、リスクレベルを上げる、積み立て期間追加で2カ月伸ばす、など」(大原氏)

 ゴールベースアプローチでは、運用成績がプラスだったのかマイナスだったのかよりも、現在の状況で最終的なゴールが達成できるのかどうかを大事にする。そのため、日本資産運用基盤グループがQUICKと開発していくツールでも、各顧客が設定したゴールと、それに対する達成度合い、達成確率を表示する点が重要になる。

 「アドバイザー向けにダッシュボードを用意する。担当する50人、100人の顧客の、毎日のゴール達成確率などが出てくる。達成確率が落ちている、上がってきているという場合には、『こんなふうに計画を調整しませんか』と顧客と話す形だ」(大原氏)

 老後資金の用意のように長期に渡る運用では、最大のリスクは相場が下落することではなく、途中で運用を止めてしまうことだと、多くの専門家が指摘する。しかし、どうしても感情が影響するため、自分一人では金融理論に即した投資行動を取るのは難しい。そんなときも、第三者であるアドバイザーに相談することで、冷静な行動を取ることができる。

 こうした投資行動コーチングによるリターンの押し上げ効果は、年率で平均3〜4%に達することが、いくつかの調査で分かっている。

メリルリンチのレポートをもとに三菱UFJ国際投信が作成した、金融アドバイスの推計価値

アドバイザーの価値を生かすための投資一任契約

 資産運用アドバイスといっても、上がる株を教えるとか、特別な投資商品をあっせんするとかといったものではない。顧客のゴールを整理、共有し、そこに向けて投資行動のコーチングを行う。そして、投資成績ではなくゴールの達成確率の変化に基づいて、運用手法を調整していく。

 こうした金融アドバイスビジネスは、これまでありそうでなかった。それは資産運用に関わる枠組みに理由がある。

 例えば、ファイナンシャルプランナー(FP)はゴールの相談はできるかもしれないが、実際の投資運用は制度上行えない。投資信託では、投資運用は行ってくれるが、個別のアドバイスは行わない。投資助言業は、米国のRIA(投資顧問)とは違い運用の執行権を持たない。さらに、ビジネスとして見た場合、料金は独立して徴収するよりもサービスに内蔵している方が成り立ちやすいが、この3つの中で徴収機能を内蔵しているのは、信託報酬として自動的にフィーを徴収できる投資信託だけだ。

資産運用に関わる枠組みとその制約(日本資産運用基盤グループ資料より)

 こうした観点から、大原氏がアドバイスビジネスの前提として考えるのが投資一任契約だ。顧客から投資判断を一任され、投資を行う権限を委託される契約で、ラップ口座やロボアドバイザー、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)などがこの契約形態を使っている。

 しかし従来の投資一任契約は、顧客ごとにカスタマイズしたポートフォリオを提供するところを付加価値としており、ゴールベースアプローチに基づいたアフターフォローは想定していなかった。結局、運用によってリターンがどうだったかが評価軸になってしまっていた。

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