#SHIFT

「コロナ手当」を美談で済ませず見直すべき、非正規雇用の“当たり前”河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)

» 2020年04月24日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

非正規=低賃金は当たり前ではない

 そもそも日本では「非正規は正社員より低賃金」が当たり前ですが、欧州諸国では非正規社員の賃金は正社員よりも高くて当たり前。

 フランスでは派遣労働者や有期労働者は「企業が必要なときだけ雇用できる」というメリットを企業に与えているとの認識から、非正規雇用には不安定雇用手当があり、正社員より1割程度高い賃金が支払われています。イタリア、デンマーク、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどでも、「解雇によるリスク」を補うために賃金にプラスαを加えるため、非正規労働者の賃金の方が正社員よりも高くなっているのです。

 スーパーやドラッグストアなど流通各社で、従業員に手当や一時金を支給する動きが広がっていますが、今回の出来事を機に、「非正規=低賃金で本当にいいのか?」という議論も進めるべきではないでしょうか。

「感染防止に気を配りながら最前線で接客などに当たる従業員の負担に報いるため」
「大変な状況の中でも働いてくれる従業員への感謝とねぎらいの気持ち」

 と、ちょっといい話にするのではなく、そもそもの問題を考えてほしい。

 100年に一度とされる今回のパンデミックは、私たちの価値観を大きく変えることになると思います。その中で「今までの当たり前はおかしくない?」という疑問を、私たちは今、求められているのかもしれません。

河合薫氏のプロフィール:

photo

 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)。


お知らせ

新刊『定年後からの孤独入門』(SB新書)が発売になりました!

 「定年ぼっち」に負けない生き方とは――?

 職場や社会に居場所のないオジサンたち。定年前後の本当の不安は、お金や健康より「孤独」なのです。

 現役時のニッポンの“カイシャ生活”にこそ、定年前後の「孤独化」の芽があります。健康社会学の立場から、組織の中における現代人の「ジジイ化」「オジサン化」現象を分析し、鋭いメスを入れてきた著者が、「定年」を境に居場所を失い孤独に陥りやすい人の特徴を分析し、そうならないための対処法をお伝えします!

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.