新型コロナのパンデミックで広がった言葉の一つである「エッセンシャルワーカー」とは、「市民の生命と財産を守るために働いている人」と定義され、一般的には法執行、治安、食料生産、医療、緊急対応等に携わる労働者を指しています。
欧米では具体的にエッセンシャルワーカーの職種を定めているケースもありますが、日本では「日常に必要不可欠な職業」と曖昧に使われています。
ただ、世界各地で共通しているのは、エッセンシャルワーカーの人たちの多くが、労働市場での地位が低く、報酬も恵まれていないという点です。
例えば、日本ではスーパーやドラッグストアには、パートなど非正規雇用の人たちがたくさん働いています。清掃や警備に携わる人たち、宅配のドライバー、介護施設などで働く人たちも非正規がほとんどです。もともと人手不足の業種も多く、厚生労働省によれば、「商品販売の業種」の2月の有効求人倍率は2.54倍、トラック輸送も含む「自動車運転の職業」は3.01倍と、いずれも全体の1.38倍を大きく上回りました。
それだけではありません。ご承知の通り、日本では単なる雇用形態の違いが身分格差になっているという悲しい現実も忘れてはなりません。
以前のコラム(「来なくていい」と言われても不安? 台風があぶり出す“会社員という病”)で、東日本大震災のときに計画停電に伴う通勤困難と節電に伴い、会社から「不要不急の仕事の場合、自宅待機せよ」との指示が出され、「自分の仕事を精査すると、別に今やらなくても困らないだろうってことのオンパレードだった。スケジュール帳に書き込まれていた仕事は、全て不要不急だった」と自分の存在価値を見失った人たちについて書きましたが、今回の新型コロナでは、必要不可欠な仕事についている人たちが窮地に追いやられている。
苛立った客に罵声を浴びせられ、感染リスクが高いと差別され、「子供のために休みたい」と思っても休むこともできず、安い賃金で働いている。理不尽としか言いようがありません。
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