なぜ起こる? 欧州、電力マイナス価格の謎に迫る欧州の電力市場の仕組み(4/6 ページ)

» 2020年05月11日 07時00分 公開
[Masataka KodukaITmedia]

実際にマイナス価格が発生するケース

――さて実際、どんなときに電力価格がマイナス価格となるのでしょうか。実際にマイナス価格となったケースについて知りたいです。

梶村氏 「ドイツの経済エネルギー省のSMARDというサイトがあります。ここでは、ドイツの電力出力市場の現状が、ほぼリアルタイムで公開されています。

ドイツの電力出力市場の状況(ドイツの経済エネルギー省のSMARDより)

 例えばこのグラフは、19年4月22日の電力の需給状況と市場価格を表しています。グラフの色分けは電力の種類を示し、中間の黄色い部分から下が再生可能エネルギー、黄色が太陽光発電、青系統が風力発電、水色が水力発電、一番下の緑部分がバイオマス発電です。黄色い部分より上が、原子力発電、石炭/褐炭火力発電です。これらを合わせて、電力供給量を時間帯別に示しています。

 さて、赤い曲線は、当日のドイツの電力需要です。昼、供給量がポコっと山になっている時間帯、電力供給が需要を大きく上回っているのが分かりますね。で、ギザギザのデジタル曲線が電力の市場価格です。左軸が価格(ユーロ)なのですが、10〜11時ごろから18時まで、電力価格がゼロを割り込み、マイナス価格になっていますね」

――へえ、これはとても分かりやすいですね。なぜ、この日、約7時間もの間、マイナス価格になったのでしょうか。

梶村氏 「この日は、イースターマンデーで祝日でした。ですので、会社などはお休みで、もともと電力需要が少ない。その上、風がよく吹く日でした。加えて、昼間ものすごく晴れていい天気でしたので、太陽光発電量がとても多かったことを黄色い部分が示していますね」

――ああ、確かにその日はいい天気だった記憶があります。誰でも外に出ちゃうでしょうから、家庭内での電力需要も下がるでしょうね。

梶村氏 「ええ、絶好の天気でしたので、太陽光発電と風力発電で需要をほとんどカバーしてしまっているにもかかわらず、上方にある原子力発電や、石炭火力発電などがほぼ出力を落としていない。このため供給が需要を上回り、マイナス価格となったのです。『価格はマイナスなのに、なぜ、原価コストのかかる燃料を燃やしてまで、発電しているのですか?』って誰もが考えますよね」

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