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中国産CGアニメがディズニーやピクサーを駆逐する――市場規模1兆円「中国映画ビジネス」の帰趨中国アニメ『羅小黒戦記』ヒットの舞台裏【後編】(6/7 ページ)

» 2020年05月26日 04時00分 公開
[伊藤誠之介ITmedia]

中国の最新映画を日本で同時公開できなければ「やる意味がない」

 以上が数土氏へのインタビュー内容だ。

 これまで見てきた中国における最新映画市場の動向と、日中のアニメ業界での関係を踏まえた上で、『羅小黒戦記』の日本配給を行っているチームジョイの代表取締役CEOである白金氏に話を聞いた『羅小黒戦記』において、中国の最新映画を日本でも中国とほぼ同時期に公開するという実験的な試みをした白金氏は、中国製映像コンテンツの日本展開について、いくつかのアイデアを持っているという。

phot チームジョイの代表取締役CEOである白金氏

――『羅小黒戦記』の上映はもともと、在日中国人を対象にした映画公開のテストマーケティングだったとの話がありましたが(前編記事を参照)、そちらの結果はどうだったのでしょうか?

白金氏: 『羅小黒戦記』に関して言えば、中国人留学生の反応が特に良かったですね。この人たちの中には、いわゆるオタクがたくさんいるんです。日本のアニメが好きだから、日本を留学先に選んだという人が多いので。だから、中国のアニメ映画を日本でも大陸と同時期に見られることは、すごく喜んでいました。

 じつは『羅小黒戦記』を上映した後、20年の1月19日から、今度は実写映画を池袋で限定公開しているんです。『寵愛』という、ペットと人間の愛情を描いた映画で、こちらも中国で大ヒットした作品です(20年第1週より中国で公開されて、週間興行成績の第1位を記録)。ただ日本だと『寵愛』ではペットの映画だという内容が伝わりにくいので、邦題は『モフれる愛』としました。

phot 『モフれる愛』

 あとは、『白蛇:縁起』という3DCGアニメについても、これから日本での展開を、いろいろと仕込んでいこうと思っています。この作品は中国の会社とワーナー・ブラザースの合作なので、私たちは中国側と一緒に日本展開をしていきます。

――『白蛇:縁起』は、アメリカなどではすでに劇場公開されていますよね。

白金氏: その通りです。『白蛇:縁起』は中国では19年1月に公開されたのですが、この作品は日本で同時に上映できなかったんです。私としては『羅小黒戦記』のように、中国と日本でほぼ同時の公開を、今後も目指したいと思っています。むしろ同時じゃないと、やる意味がありませんから。

 なぜかというと、中国での公開後にカンヌをはじめとする世界の映画マーケットで作品のセールスが行われると、私たちよりも優秀な配給会社が日本にはたくさんありますから、そこが権利を買ってしまいますよね。だから、すでに公開された作品や、少し前に作られた有名な作品を日本で上映するといった仕事は、私たちには向いていないと思います。まだ世に出ていない作品を、素早く日本でも展開するのが、私たちの会社の戦略です。

 私のビジネスは、映像作品の製作・企画・投資が中心で、映画配給は実験的な仕事でした。でもそれがいい勉強になったので、次からは業務にしたいと思っています。

phot 『白蛇:縁起』

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