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» 2020年05月26日 04時00分 公開

中国アニメ『羅小黒戦記』ヒットの舞台裏【後編】:中国産CGアニメがディズニーやピクサーを駆逐する――市場規模1兆円「中国映画ビジネス」の帰趨 (2/7)

[伊藤誠之介,ITmedia]

中国では、中国産CGアニメがディズニーやピクサーを追い出そうとしている

 次に、19年の中国で起こったアニメビジネスの新しい波について、ジャーナリストの数土直志氏に話を聞いた。

 数土氏はアニメーションを中心に、国内外のエンターテインメント産業に関する取材・執筆を行っている。なかでも、17年に数土氏が執筆した著書『誰がこれからのアニメを作るのか?』(星海社新書)では、「中国資本とネット配信が起こす静かな革命」というサブタイトルにも表れているように、10年代後半に中国資本が日本のアニメ業界に進出してきた経緯を、いち早く分析している。

 数土氏によると、中国で3DCGアニメ映画の超大作が次々と作られているのには、明確な狙いがあるという。

phot 数土直志(すど ただし)ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。アニメーションを中心に映像ビジネスに関する報道・研究を手掛ける。証券会社を経て04 年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立。09年にはアニメビジネス情報の「アニメ! アニメ! ビズ」を立ち上げ編集長を務める。16年に「アニメ! アニメ!」を離れて独立。主な著書に『誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命』 (星海社新書)。

数土氏: 『ナタ〜魔童降臨〜』や『白蛇:縁起』が競っているのは、日本のアニメではなくて、ピクサーやドリームワークスといった、ハリウッドのCGアニメ映画会社なのです。作画スタッフの実力が大きく影響する2Dの手描きアニメとはやや違って、3DCGアニメの場合はお金をかければかけるほど、クオリティーに反映される面も大きいです。お金をつぎ込める中国資本の企業が、3DCGアニメで日本よりも高いクオリティーの作品を作れるのは、ある意味当然ですよね。

 19年の中国で、『ナタ〜魔童降臨〜』が大ヒットした一方で何が起こったかというと、ハリウッドのCGアニメ映画がダメだったんです。大作と呼ばれる作品がどれも、中国の映画館ではヒットしなかった。

――日本で130億円以上の興収を上げている『アナと雪の女王2』が、中国では8.3億元(約124億円)と、市場規模が小さい日本よりも低くなっています。他にも『ヒックとドラゴン3』が3.7億元(約55億円)、『トイ・ストーリー4』は中国の海外映画年間興収ランキングの20位にも入らないなど、確かに低調ですね。同じディズニー系列の映画でも、『アベンジャーズ/エンドゲーム』は42億元(約620億円)と、『ナタ〜魔童降臨〜』に迫る大ヒットになっているのですが。

数土氏: 中国産とハリウッド産のファミリー向け3DCGアニメ映画が、19年の中国映画市場でガチンコにぶつかった結果、中国産のCGアニメが勝ったということです。もしこの傾向がこのまま続くとすれば、中国国内に限って言うと、ディズニーやピクサーを追い越すことは十分に可能だと思いますよ。

 ただ、だからといって3DCGアニメをはじめとする中国産のコンテンツを、日本やアメリカなど海外に輸出できるかというと、そう簡単にはいかないでしょうね。

――それはなぜですか? 

数土氏: 先ほどの数字からも分かるように、中国国内の映画マーケットが非常に大きいので、そもそも作り手が中国国内を見ているんです。もちろん彼らも「海外に輸出したい」とは言っているんですけれど、映画を作る時点で中国国内でヒットすることを考えているので、海外に輸出するには厳しいコンテンツが多くなるんです。

 それはアニメだけではなくて実写映画も同じですよ。中国の映画興収ランキングの上位には、愛国映画が多く並んでいます。

――あとは、文化の違いがいちばん表に出やすいコメディーですね。大スケールのアクション映画なども増えてはきているのですが、まだまだ物足りないですよね。

数土氏: そこが韓国映画との違いだと思います。韓国は自国の映画マーケットが大きくないので、必然的に映画やテレビドラマを海外に売ることを意識して、世界市場に通用するコンテンツを作るようになっていきましたから。

 そういう意味では中国は、かつての日本と同じですよね。今は日本も国内マーケットだけでは苦しくなってきて、コンテンツの世界戦略を考えるようになっていますけど、かつては国内のマーケットだけでやっていけたために、国内市場だけを意識した作品を作り続けていたので。だから中国の映画やアニメも、その壁を突破できるかどうかだと思いますね。

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