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» 2020年05月26日 04時00分 公開

中国アニメ『羅小黒戦記』ヒットの舞台裏【後編】:中国産CGアニメがディズニーやピクサーを駆逐する――市場規模1兆円「中国映画ビジネス」の帰趨 (1/7)

日本のミニシアターでロングランヒットを続けているアニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』は、中国では2019年9月に公開され、中国国内で3.1億元(約48億円)の興行収入を記録した。アニメビジネスに詳しいジャーナリストの数土直志氏に、アニメ業界で生まれつつある日本と中国との新しい関係を聞く。

[伊藤誠之介,ITmedia]

 日本のミニシアターでロングランヒットを続けているアニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』は、中国では2019年9月4日に公開され、中国国内で3.1億元(約48億円)の興行収入を記録した。

 記事の前編<異例のロングランヒット、中国アニメ『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』の舞台裏に迫る>では日本配給を手掛けたチームジョイの白金氏に同映画がロングランヒットを続けている要因を、中編<『鋼の錬金術師』監督が語る、中国アニメ『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』ロングランヒットの訳>ではアニメーション監督の入江泰浩氏に『羅小黒戦記』の魅力と、日本で人気が広がる過程について聞いた。

 後編ではアニメビジネスに詳しいジャーナリストの数土直志氏に、アニメ業界で生まれつつある日本と中国との新しい関係を聞く。

phot 『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』の一コマ。映画館の営業が再開した劇場では、応援し続けるファンに感謝の意を示すため、しおりの入場特典を配布しているという(以下、クレジットのない画像はチームジョイ提供)

2019年は「中国アニメ映画元年」

 19年の中国映画市場では、他にも中国製アニメ映画が相次いで大ヒットしている。まず、19年1月に中国で公開された『白蛇:縁起』が、4.49億元(約68億円)の興行収入を記録。中国の映画市場で最も書き入れ時となる旧正月の2月には、中国の人気CGアニメ映画シリーズ第6弾『熊出没・原始時代』が公開されて、7.11億元(約107億円)の興収を上げている。

 そして特筆すべきは、7月に中国で公開された『ナタ〜魔童降臨〜(哪吒之魔童降世)』だ。道教の少年神である哪吒(なた)を主人公にしたこの作品は、中国の映画市場で50億元(約770億円)もの興行収入を記録。日本でも話題を呼んだ『三体』と同じ作者によるSF小説を実写映画化した『流転の地球(流浪地球)』や、中国でも大人気の『アベンジャーズ/エンドゲーム』といった強力なライバルを押さえて、アニメ映画で初めて中国映画市場の興行収入年間1位に躍り出ている。

 それまでの中国製アニメ映画で最も多くの興収を上げたのは、『西遊記 ヒーロー・イズ・バック(西游記之大聖帰来)』の9.56億元(約144億円)だ。過去の中国映画市場で最もヒットしたアニメ映画は、ディズニーの『ズートピア』で15.3億元(約230億円)というから、その約3倍もの興収を記録した『ナタ〜魔童降臨〜』が、いかに桁外れの大ヒットなのかがよく分かる。(以上の興行収入はいずれも、中国国際放送局 CRI Onlineより)

 『羅小黒戦記』の日本配給を行っているチームジョイ株式会社で、代表取締役CEOを務めている白金氏は、「2019年は中国のアニメ映画元年」と評した。白金氏によると、19年に中国製アニメ映画が相次いで登場し大ヒットしたのは、その制作期間を逆算すると、15〜16年に中国のアニメ制作会社に対して、大規模な資本を投じた投資家たちがいたはずだという。その背景を、白金氏は以下のように語っている。

白金氏: 日本の映画マーケットが約2600億円なのに対して、中国の映画マーケットは約1兆円(※いずれも19年)です。そして2600億円の日本映画市場のうち、アニメが25〜30%を占めています。米国(アメリカ)でも、映画マーケットの約10%がアニメです。

 それに対して数年前の中国では、映画マーケットに占めるアニメの割合は1〜2%でした。しかもその1〜2%を、アメリカと日本のアニメが分け合っている状態で、中国産のアニメはないんです。

 でも日本やアメリカの例を考えれば、中国でも映画興収の15〜20%がアニメになる可能性は十分にあるはずです。そう考えた投資家たちが、15〜16年【※】に中国のアニメ制作会社に対して大量に投資した結果が、19年の「アニメ元年」に結びついたのだと思います。

 さらに言うと、日本やアメリカで人気のアニメ作品では、映画の興行収入はIP全体の収入のうち、ほんの数%です。アニメのヒット作が生まれれば、映画だけでなくオモチャも売れる。ゲームも売れる。関連グッズも売れる。中国の投資家たちは、そこを見ているのだと思います。

【※2015〜2016年】ちなみに2015年には、中国で作られた3DCGアニメ映画『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』が、中国映画市場で大ヒットしている。沈滞化していた中国産アニメにとって快挙ともいえるこの映画のヒットが、その後の中国製アニメ映画の活性化に影響を与えているだろう

phot 『羅小黒戦記』の日本配給を行っているチームジョイ代表取締役CEOの白金氏
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