――ここまでの話をまとめると、日本アニメに対する中国資本の進出は、現状ではあまり成功していないし、日本のアニメを中国へ輸出するのも、表現規制的な面でだんだんと難しくなってきているということですよね。今後、日本のアニメが中国と競い合っていく、あるいは協調していく上では、どのような点を意識するべきでしょうか。
数土氏: 中国の3DCGアニメが意識しているのは、ディズニーやドリームワークスのようなハリウッド映画の市場です。だから日本の人たちとしては、『羅小黒戦記』のような中国の手描きアニメについて考えたほうがいいと思います。
日本の市場はどこかというと、やっぱりヤングアダルトですよね。表現規制の問題などを考えると、中国で『進撃の巨人』を作ることはできないわけですから。その点に関しては、日本は有利だと思います。
理想的なことを言うと、日本のアニメ制作の現場はすでにかなりインターナショナルになっているので、中国だけでなく他のアジアやそれ以外の地域も含めて、世界の人たちが日本に集まって作品を作るようになれば、いちばんハッピーなんじゃないかと思います。
中国は表現規制だけでなく、法人の設立などのビジネス面でも、いろいろと規制が面倒なのですよ。日本はそういう面ではラクですから、世界の人々が集まるのにはちょうどいい。中国マネーでもいいし、中国の原作でもいいんだけど、そういった形でアニメを作ることができたら、理想的ですよね。
――『羅小黒戦記』のような形で今後、中国で作られたアニメ作品が日本に入ってくる可能性はあると思いますか?
数土氏: 可能性はあると思います。ですが、日本のアニメ業界が特有の問題を抱えているように、中国のアニメ業界も特有の問題を抱えているはずなので、一方的にどっちがスゴイ、みたいな話ではないと思います。だからそこに関してはまだ保留ですね。
それから19年の中国映画市場では、アニメが大ヒットしただけでなく、中国製の大作SF映画も大ヒットしているんです。
――日本ではNetflixで配信している『流転の地球(流浪地球)』ですね。
数土氏: 『流転の地球』は中国以外では、日本も含めてNetflixが独占配信しています。この『流転の地球』の原作者は、日本でも話題になった中国のSF小説『三体』の作者、劉慈欣(りゅう・じきん)なのです。じつは今、中国で『三体』の実写化とアニメ化が同時に進んでいて、アニメ版は中国の動画配信サイト「bilibili動画」で21年に配信予定です。
『三体』の小説はアメリカでも日本でもベストセラーになっているので、この『三体』の映像化がどうなるのかが、中国の映像コンテンツが今後、海外に進出していく上でのキーポイントになるだろうと考えています。
日本でも今後、中国のアニメが成功する可能性はあると思います。ですが、それにはまず『羅小黒戦記』に続く第2、第3のヒット作が出てくるかどうかでしょうね。
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