クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

マツダの決算 減収減益の中で好内容池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2020年06月01日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

台数ほどには落ち込まなかった売り上げ

 しかしながら、売上高を見るとマイナス幅が4%となっている。つまりは昨年より高いクルマが売れていて、台数のダウンを半減程度にカバーし、直撃を免れているということになる。

 売上高の地域別をチェックしてみよう。マツダの決算資料からデータを抜き出して、年度ごとに合計してから対前年度比を出してみる。日本は93.5%、北米は102.8%、欧州は100.9%、その他が83.8%となり、どうやら売上高のダウンは、日本とその他の地域が問題らしいことが分かる。日本の場合は容易に想像がつくが、消費税増税の需要減が遠因だろう。

地域別の売上高の前年比較(単位:億円)

 実際地域別の販売分析ページで日本の販売を見ると、台数が6%落ちていつつ、登録車シェアは前年同水準とある。つまりは全需の落ち込み(5%)通りに推移してしまったということになる。

 では北米はどうだろう? こちらも販売台数は6%落ちているのだが、先ほどの売上高前年比の計算では、むしろプラスとなっていたので、台数はダウンしながらも構成が良くなっていることを意味する。確かに比較的高価格のCX-5/CX-9は対前年で台数増とある。つまり、北米については、より高付加価値の車両へとうまくスライドできたということだ。

 欧州はどうか? こちらも台数は咋対比で2%減。しかし、こちらも売上高前年比の計算ではむしろプラスになっていることから、北米以上に構成を改善し、より高付加価値の車両が売れていることになる。

 中国は咋対比で販売が14%減だ。内容を見たくとも、ここは同じ条件で売上計算が出せない。なぜならば、マツダの中国法人は連結決算対象ではなく、持分法の範囲でのみ利益が計上されるので、売上や利益に関しては、年度の区切りが違うのだ。なお、台数については例年、日本の年度に合わせて日本の決算発表資料のために4月-3月で集計し直したデータになっている。中国市場の場合、利益にしても損失にしても持分法の範囲(概ね半分)しか影響を受けないので、こういう荒れ相場の時は、本体のマツダとしては助かるだろう。

 その他地域は厳しい。全体としては16%ダウン。マツダが強い豪州では18%減で、ここでは利益も出血が多い。このへんで勘の良い人なら原因が見えてくる。マツダは、米ドルの為替変動には強いが、豪ドルの為替変動に極めて弱い。米国ではプラスが出ていて、豪州で大きくマイナスということはまた円高でやられているのではないか?(「マツダ藤原副社長インタビュー(2)」参照)

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