ちょっと別の角度から見直してみよう。営業利益の変動要因が一番分かりやすい。
当期の営業利益変動要因
毎度のごとく、両サイドにある棒グラフが昨年度と本年度の営業利益を指し、その間で、各種要因がどのように押し引きをしたかが、この表から分かる。
昨年の利益は823億円。それに対して「台数・構成」で183億円積み足している。つまり販売はプラスで、去年より183億円増えているのだ。しかも「コスト改善」のところでは、原材料価格が高騰する中で260億円のプラスを出している。しかし、「為替」で奈落の底へ落とされる。為替での損失が683億円もあれば、それは仕方ない。三歩進んでも二歩下がってしまうのだ。
開発費は3億円ほど削っているものの、全体で1350億円の開発費の内3億円程度であれば、未来を切り売りしているというほどのことではないし、米国新工場への投資なども進めており、厳しい中でもちゃんと未来への投資は継続されている。
仮に、この為替損の683億円を今期利益436億円にプラスすれば、1119億円となり、咋対比は136%の大躍進になっていた。ただし、ぬか喜びはできない。その仮定の利益額で利益率を計算しても3.3%にしかならないので、マツダの稼ぐ力が足りないという現実は変わらないのだ。「為替さえなければ……」だけでは解決しない。せめて利益率5%台後半まで早急に復帰させたい。
- 自動車を売るビジネスの本質 マツダの戦略
原理原則に戻ると自動車ビジネスもシンプルだ。商品とサービスに魅力があれば、新車を正価、つまり値引きせずに売れるから中古車の相場が上がり、その結果下取り価格が高いので、買い替え時により高いクルマが売れる。これが理想的サイクルだ。それを実現した例として、マツダの取り組みを歴史をひもといてみよう。
- 象が踏んでも壊れないトヨタの決算
リーマンショックを上回り、人類史上最大の大恐慌になるのではと危惧されるこの大嵐の中で、自動車メーカー各社が果たしてどう戦ったのかが注目される――と思うだろうが、実はそうでもない。そして未曾有の危機の中で、トヨタの姿は極めて強靭に見える。豊田社長は「トヨタは大丈夫という気持ちが社内にあること」がトヨタの最大の課題だというが、トヨタはこの危機の最中で、まだ未来とビジョンを語り続けている。
- ホンダの決算から見る未来
ホンダの決算は、コロナ禍にあって、最終的な営業利益率のダウンが4.2%レベルで抑えられているので、酷いことにはなっていない。ただし、二輪事業の収益を保ちつつ、四輪事業の利益率を二輪並に引き上げていく必要がある。特に、武漢第3工場の稼働など、中国での生産設備の増強は続いており、中国マーケットへの傾倒をどうするかは課題だ。
- 悪夢の「マツダ地獄」を止めた第6世代戦略
一度マツダ車を買うと、数年後に買い換えようとしたとき、下取り価格が安く、無理して高く下取りしてくれるマツダでしか買い換えられなくなる。その「マツダ地獄」をマツダ自身が今打ち壊そうとしているのだ。
- マツダの決算 またもや下がった利益率の理由
売上高は増収だったが利益面の落ち込みが激しいマツダの決算。北米と中国市場の不振が響いた結果だ。今後に向けて、販売店改革とパワートレーンの刷新を進めるが、これが北米市場で実を結ぶかどうかが焦点となる。
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