クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

マツダの決算 減収減益の中で好内容池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)

» 2020年06月01日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

構造改革ステージ2の達成

 マツダはここ数年、構造改革ステージ2として、販売奨励金(インセンティブ)の抑制を進めてきた。つまり値引きの抑制である。値引きをしなければ、中古車の査定が高値で維持される。それは顧客の資産価値が守られるということで、それは次の買い替えの時に顧客の手元資金が多くなり、より高付加価値のクルマへと買い替えてもらえることにつながる。

 マツダとしては、ここ数年必死で取り組んできたこのサイクル改善を死守したいので、苦渋の選択として、販売台数のダウンを許容してでも未来への投資として値引きの抑制を続けており、それはこの1年で大きく改善した。

 かつて「マツダ地獄」といわれた現象があった。新車を売りたいがための大幅な値引きで、高年式中古車価格が暴落、釣られて低年式車は値段が付かなくなる。トヨタや日産で下取りを断られるレベルで、中古車の資産価値が暴落していたのだ。

 筆者が免許取り立ての頃、毎週末、近所のマツダから折り込みチラシが入ったのだが、そこには12A型や13B型ロータリーを積んだ二代目コスモが20万円ちょっとで選り取り見取りに並んでいた。今振り返ると恐ろしいが、あのコスモはまだ5、6年落ちだったはずである。

 第6世代の時代をまるまるかけて、マツダは国内のそうした状況を克服してきた。しかし昨年の決算の時点では、グローバルにはそのオペレーションは未完結だった。特に北米ではまだ値引き販売を撲滅できず、日本でのブランド価値販売の手法を、どうやって北米で実現するかが大きな課題だった。どうしてもインセンティブの誘惑から逃れられなかった北米マーケットでの誘惑をようやく断ち切り、今年の決算で、課題だった北米での販売利益を増加させたことは、オペレーションの成功を意味している。

 この部分は大幅な進歩であり、マツダ自身が立てた課題は、年次としては多少遅れつつも、キチンと消化していることがこの決算からは読み取れるのだ。

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