加えて日本企業には、会社に在籍していながら実質的に仕事が無い、いわゆる社内失業者が400万人もいるとされる(リクルートワークス研究所調べ)。もしこの社内失業者の「適材適所」化が進み、何らかの生産に従事してもらうことで業務のムダが1割削減できたと仮定する。削減した業務分の労働力が別の生産に充当されたと仮定して試算を行うと、驚くべき結果が得られる。
何と日本のGDPは約70兆円も増えて620兆円を突破する。この数字を使って日本の生産性を再計算すると、日本の時間あたりの労働生産性は52.6ドルとなり、2018年との比較で12%以上、向上する。数字だけを聞くと大したことがないように思えるかもしれないが、これはとてつもない効果である。
生産性が12%上がると、同じ豊かさと労働者数でよければ年間の労働時間は約11%少なくて済む。1日あたりの労働時間を同じと仮定すると、出勤日ベースでは年間26日以上も休みが増えることを意味している。
欧米人が、夏に2週間から1カ月のバカンスを楽しめるのは、文化が違うからでも、労働に対する価値観が違うからでもなく、単純に社会が豊かだからである。そして、日本でも業務のムダを見直すだけで、欧米人に近い生活様式を実現できる。
もし、欧米人のようにゆっくり休むことが日本人の気性に合わないなら、今までと同じように働けば良い(筆者なら喜んで休むが……)。生産性の定義に従えば、労働時間が変わらない場合、生産性が12%上がるということは年収が平均で12%上がることを意味している。400万円程度の年収だった人は、総じて450万円くらいの年収になるので、生活に相当なゆとりが出てくるのではないだろうか。
近年、日本をことさらに賛美し、諸外国との比較を嫌う風潮がまん延しているが、筆者にはまったく理解できない。先進各国と比較して日本の生産性が低く推移しており、これが低賃金や長時間労働をもたらしているのは明らかである。こうした事態は何としても改善すべきであり、称賛するようなものではないはずだ。
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