このところホワイトカラー層の生産性向上を目的に、「Slack(スラック)」に代表されるビジネスチャットを導入する企業が増えている。しかし一部の職場では、昭和型のマナーをビジネスチャットに持ち込み、ツールを有名無実化しているケースがあると言われる。
かつての日本では、パッケージソフトで定義された効率的な業務プロセスに組織を合わせるのではなく、効率の悪い業務プロセスにシステムの方を合わせるという本末転倒な取り組みを行い、IT導入効果を台無しにするというまるで喜劇のような事例がたくさんあった。ビジネスチャットも同じような結果にならないよう、ITを導入する意義について再確認しておく必要があるだろう。
数年前までビジネスチャットは、先端的な企業が使いこなすものというイメージが強かったが、今では大手企業もこぞって導入するようになっている。ビジネスチャットについては以前、本コラムで取り上げたことがあるが、うまく使えば、組織内のコミュニケーションのあり方を劇的に改善することができる。
従来型連絡手段の中核だった電子メールは、メモでのやりとりを電子化しただけであり、基本的な概念は紙の延長線上にあった。ライン上での指示や命令など、特定の相手に対して連絡を行い、指示を受けた人は報告を帰すというコミュニケーションに向くツールといって良い。
電子メールには、CCとBCCという機能があるが、CCはカーボンコピーの略で、カーボン紙を使ってメモを複写し、関係者に配るという企業文化に起因している。まずは1対1のやりとりがあり、その情報をシェアすべき人を選択することが電子メールの大前提である。
しかしビジネスチャットは、この概念とは大きく異なっている。特別な理由がない限り、やりとりは皆がリアルタイムで閲覧できるようにし、そのテーマについて知見を持っている人はいつでも議論に参加できる。これによって社員が持つ知見をスピーディーに業務に生かすことが可能となり、誰がどの業務に貢献したのかも可視化できる。スピード感が勝敗を分けるIT時代にはぴったりのツールといってよいだろう。
だが、一部の職場では、こうしたビジネスチャットの利点を抑制するようなマナーが推奨されているという。先日、ネット上でビジネスマナーの講師が、あまりにも堅苦しいビジネスチャットのルールを教育していると話題になっていた。
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