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Slackで昭和の“化石マナー”押し付け……日本企業はなぜIT新サービスを改悪するのか“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2020年02月07日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

「冒頭にあいさつ文句」「重要な件はメールで再送」

 Twitterの投稿主によると、あるビジネスマナーの講師はスラックを利用するにあたり、メッセージの冒頭に宛名と所属、あいさつを必ず記入すること、メンション(通知)は役職者に対しては迷惑になるので使わないこと、入力中というメッセージが相手に表示されないようあらかじめテキストを書いた上でコピーすること(たいていのビジネスチャットでは、自身が書き込みを行っている時、相手には「書き込み中」というメッセージが出る)、重要な件については後でメールで再度送ること、といった指導をしていたそうである。

photo 社内のコミュニケーション効率化で多用されるスラック(公式Webサイトから引用)

 この話は、ネタとして投稿された可能性もあるが、日本におけるIT導入の歴史を考えると、あってもおかしくないケースだと筆者は考える。

 組織にIT導入することの最大のメリットは、業務プロセスを標準化することによって、効率のよい仕事の進め方を全員が共有化できることである。各人がバラバラに業務を進めるよりも、システムに沿って規格化された形で仕事を進める方がムダが発生しにくい。

ERP導入、ことごとく失敗した日本企業

 こうした考え方をさらに推し進めたのが、SAPやオラクルに代表されるERP(統合基幹業務システム)である。コンサルティング・ファームで得られた知見を生かして、もっとも効率的な業務プロセスをシステム上で定義し、組織をそのプロセスに合わせることで、短期間で業務の効率化を実現できるというのがERP導入の最大のメリットとされた。

 1990年代の後半から2000年代前半にかけて日本企業はこぞってERPを導入したが、ことごとく失敗したという歴史がある。その理由は、従来の仕事の進め方への従業員の執着が強すぎて、ERPで定義された業務プロセスに拒否反応を示し、多大なコストをかけて、従来のプロセスに合うようソフトウェアの機能を改変(カスタマイズ)してしまったからである。

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