人事を変えるAI 人事部に求められる役割は?“AI歓迎”の声も多い?(3/4 ページ)

» 2020年06月12日 08時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 例えばコンサルティング会社のアクセンチュアでは、日本法人内で独自に「Randy-san」というSkype用のチャットbotを開発して社内に展開した。社員からの人事制度系の質問に答えることを想定しており、アクセンチュアの独自AIプラットフォーム「AI Hub」上に構築している。

 社内のルールや法規制に精通した人事部にとっては簡単でも、一般の社員は正答を導き出すのが難しいという問題は多い。そうした質問にAIが答えてくれれば、人事部の担当者は貴重な時間を別の作業に振り分けられるというわけだ。

 また獲得した有望な社員をそのまま放置しておくのではなく、さらなるキャリアアップを目指して支援すること、すなわち社内研修や能力評価といった分野でもAIが応用されるようになっている。

 MOOCs(Massive Open Online Courses、大規模公開オンライン講座)の主要サービスの一つとして知られるCourseraは、AIを活用した「スキル・ベンチマーキング」というツールを立ち上げた。これは彼らのサービスと契約している企業ユーザー向けに提供しているもので、自社の従業員がどのようなスキルを持っているか、他社と比較して劣っていないか、劣っている場合にはどの講座を受講させれば良いかを分析・提案してくれるというものだ。

 Courseraは既に1400社以上の企業ユーザーと提携し、各種講座を提供している。さらに個人ユーザーも3000万人以上が登録しており、こうしたユーザーたちから得られる膨大なデータを機械学習で分析。企業が業界や地域、組織の規模といった単位で競合他社と比較するのを可能にするとともに、「機械学習」のようなスキル単位で、優秀な従業員や自社レベルを把握できるようにしている。

 多くの先進的なMOOCsで、学習者の過去のパフォーマンスを分析し、次に受講すべき講座を提案したり、個々の学習者に効果的な学習パターンを割り出したり、彼らの将来の習熟度を予測したりといった取り組みが行われている。こうした学習のモニタリングは、どうかすると上からの監視だという印象を従業員に与えかねない。

 しかし前述のOracleによるアンケートのように、各種調査の結果からは、「AIの方が偏見や見落としの少ない評価をしてもらえる」としてむしろ人間の評価者よりも歓迎する傾向も見られる。もちろんAIが下す結論が納得できる精度に達していなければ、反発が起きることは避けられないが、評価という作業が人間だけに任された領域ではなくなっていることを示しているといえるだろう。

AIの成功には人事部が欠かせない

 さて、ここまで「人事の業務にAIを活用する」という視点からAIと人事部の関係を整理してきたが、人事部にはAIに関して、もう一つ大きな役割がある。

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