SpaceXは、今回の有人宇宙飛行や火星移住といったいわゆる「夢」の部分で注目を集めているものの、実際のビジネスモデルは堅実だ。
同社は、Starlinkと呼ばれるブロードバンド通信を目的とした人工衛星を打ち上げているが、同社の計画上では打ち上げる人工衛星の総数は1万2000機にのぼる。膨大な数の衛星打ち上げを可能にするのが、打ち上げにかかるロケットの内製だ。同社は、これまでの常識では投棄されていたロケットブースターを、同社の技術で再利用することで、一回あたりの打ち上げコストを圧縮している。
この打ち上げ技術を、プラットフォーム化するのが「Falcon9」と「Falcon Heavy」だ。中型機の「Falcon9」は、他の同規模のロケットの3分の2程度の水準である約66億円で打ち上げることができる。ブースターを再利用することで、内部のコストは全体でさらに圧縮できる。
SpaceXは、さまざまな企業にとって宇宙ビジネスの参入に不可欠な、人工衛星などの宇宙機器の「打ち上げ」で不動の地位を築くことで競争力を獲得するのではないかと考えられる。これは、ゴールドラッシュ時に金を掘るのではなく、坑夫用のジーンズで財産を築いた「リーバイス」と重なる。坑夫が金鉱石の採掘による一攫千金を夢みたように、今後はさまざまな企業が地球観測衛星を活用した経営に取り組み、地上−宇宙空間の輸送需要が大幅に拡大する可能性がある。このような「夢」を実現するためには、避けられない「現実」である打ち上げという部分にイノベーションを起こすことがSpaceXの勝機なのかもしれない。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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