クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

RAV4 PHV 現時点の最適解なれど池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

» 2020年06月15日 07時50分 公開
[池田直渡ITmedia]

 トヨタは一つに絞ることなど考えていない。今売れる商品、それは内燃機関とHVで、環境規制をクリアしながらガンガン売り上げを立てる。そうやって世界で1社だけCAFE規制をクリアしつつ、毎年1兆円の研究開発費を計上して、かつ2.5兆円の利益を出し、「きっと20年くらい先に売れるだろう」とFCVを店先に並べているのだ。トヨタ自身だって、10年以内にFCVが月に何万台も売れるようになるなんてカケラも思っていないのだ。

 ちなみに同じように当分もうかりそうもないシステムの内、FCVは売るけれどEVは売らないのは、FCVはまだまだ技術が十分に確立されていないから、トヨタが先陣を切ってやっておかないと実用化できないからだ。対してEVは、すでにHVやPHVで技術を習得しており、かつ先行事例が豊富にあるので、必要なタイミングになったら出せばいい。

 トヨタは今後数十年間、ユーザーが選ぶであろう推進システムのトレンドについて、当然予想はしている。向こう10年は主にHVが選ばれ、その間に少しずつPHVが選ばれるようになり、10年後あたりにPHVに主流が移ってくれるといいなぁと思っている。その時点でもHVしか売れないと、CAFEの2030年規制がクリアできず、多額のクレジットを買わされるからだ。

 そこから5年なり10年なりかけてEVが増えていき、新時代のシステム多様化の中で、適材適所的にちらほらとFCVが選ばれる場所や場面も出てくる。そういう絵柄である。

 その予測は筆者も同意である。エンジンを使ったクルマが珍しくなるのは早くとも2040年以降だし、HVやPHVを含むエンジン付きのクルマが今のEVくらい、それはつまりグローバルで見て新車販売の2%とかになる時代を、筆者は見届けられないだろう。

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