クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

RAV4 PHV 現時点の最適解なれど池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)

» 2020年06月15日 07時50分 公開
[池田直渡ITmedia]
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PHVの走り

 試乗会場は袖ヶ浦フォレストレースウェイ。モード切り替えスイッチがEVモードであることを確認してから、ピットロードをゆっくり走り、コースに出たら全開にする。モーター独特のレスポンスと低速トルクの力強さでグイグイ加速する。タイヤのグリップ限界までトラクションがかかる最近のEVとは比べても詮無いが、従来基準でいえば十分以上に速い。時速130キロを超えるとEVモードでもエンジンが起動するが、逆に言えば日本の公道であれば、どこでもEVモードのまま走れるということになる。

センターコンソールのボタンでEVモードを切り替えられる。乗車時の初期設定はEV。トヨタが実質的にEVとして使ってもらうことを想定していることが分かる

 コーナーに入っても、トヨタGA-Kプラットフォームはガッチリしており、背の高いSUVボディでも、とりあえずそこそこスポーティにサーキットを走れる。そこそこという原因は、第一にブレーキフィールだ。回生ブレーキとの協調制御もあって、ペダルはガッチリとは程遠い。そうはいってもSUVでサーキットレベルの走行をしておいて、ペダルがどうのというのは欲のかきすぎだとは思う。

 もう一点。タイヤは標準が225/60R18、一番高いBLACK TONEモデルだけが235/55R19を与えられているが、18インチは普通のサマータイヤ、19インチはオールシーズンタイヤとなっている。あくまでもサーキットを走った印象だが、19インチの方がずっと安心感があった。

 アシのセッティングが変わっているのかと思って実験部隊のエンジニアに尋ねると、ダンパーとスプリングは変えていないという。18インチは、逆バンク気味の中速コーナーでロールを止めきれない不安感があった。19インチのオールシーズンタイヤはグリップの低さのおかげで限界が低かったことに、安心感が起因するのではないかと思う。まあこういうところを走ればの話だが、違いは誰でも感じるレベルなのも確か。ただ普通は使わない領域の話である。

モーターとエンジンによって225kW(303馬力)を生み出すRA4 PHVの加速は、SUVとしては立派

 直線での安定感は優秀。全体に印象は良かった。昔のトヨタの印象とは何もかも違う。同時に乗ったハリアーはさらに良かったが、こちらにはPHVの設定は今のところない。ハリアーをPHV化すれば600万円になりかねないことを考えると、RAV4 PHVがそこそこ成功すれば、ハリアーのPHVにも出番はあるかもしれない。

 さて、結論だ。RAV4 PHVは価格的に人を選ぶクルマではあるが、おそらく下取りもそれなりに高いだろうし、お金に余裕があるならば、筆者としては止める理由は何もない。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答を行っている。


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