この点については、事業の粗利率に注目すべきである。粗利とは売り上げから原価を引いた利益の部分だ。今回取り上げた納豆定食も、定価こそ500円だが、一般的な飲食業の原価率40%を当てはめれば、店舗が負担する原価コストは200円程度と推定される。
つまり、原価と定価の価格差の範囲で無料パスの価格とリターンを設定すれば、経営状況を悪化させることなく、納豆定食を生涯無料で支援者に提供することができたのかもしれない。
参考となる事例は、百貨店が顧客に提供している「友の会」だろう。「友の会」に現金を積み立てることで、満期にはその金額に年利換算で最大15%〜20%のプレミアムが上乗せされた当該百貨店の商品券を受け取ることができる。
「友の会」の提示する、年2ケタ%のリターンも、足元の金利水準からすれば持続可能性がないと思われるかもしれない。しかし、この「友の会」は1925年に誕生していて、現在まで受け継がれている点で持続可能な仕組みとなっている。その背景には、仮に顧客に商品券を使われても「それほど懐が痛まない」という点がある。
阪急阪神百貨店が今年1月末に公表した、2019年4〜12月の粗利率(売上総利益率)は23.94%であった。つまり、顧客が1万2394円の商品を得られたと思っていたとしても、百貨店側の原価負担は1万円程度にとどまる。そうすると、「友の会」で積み立てた金額に20%の利回りに相当する商品券を付与したとしても、依然として原価+αの値段で売れていることになる。確かに、これでは人件費などを含めた営業利益ベースでは赤字となる可能性こそあるが、先に調達した資金は収益性のある事業に投資されている。トータルでみると百貨店側としても利がある制度となっているのだ。
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