1万円の納豆生涯無料パスポート、適正価格は何円?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
これを令和納豆の事例に当てはめると、無料パスの適正価格は次のプロセスで決定されるべきであったと考えられる。
まず、飲食業の粗利率が60%から考えると、無料パスの年利は友の会の事例を参考に、粗利率の60%を超えない範囲で提供されるべきだろう。次に、パス保有者が平均して何日に1回利用するかを想定すべきであった。最後に、パス保有者の平均利用年数を想定すべきだ。
具体的な数値を仮定しつつ当てはめてみよう。平均して、無料パスが「7日に1回」利用されると仮定すると、顧客が年間に享受する納豆定食の累計は2万6071円相当となる。ここから、無料パスの1年あたりの適正価格は2万6701円の粗利率60%を超えない1万6201円以上となる。最後に平均利用年数を「30年」と仮定する。その結果、「納豆定食生涯無料パスポート」の適正価格は48万6030円となる。
パラメーターとなる数字の置き方にもよるが、ある程度保守的に見積もっても無料パスは数十万円を下らないだろう。そんなパスポートを1万円で提供している時点で、持続可能な制度にすることは不可能だったといっても過言ではない。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
Twitterはこちら
- 「新聞紙をトイレ代わりにせよ」……モンスター株主のトンデモ議案が無くならないワケ
「役員及び社員は排便の際、洋式便器の便座の上にまたがるべき」「トイレットペーパーの代用品として、古い新聞紙で便座を作り、そこに排便すべき」。株主から三井金属鉱業に、こんな株主提案がなされた。取締役会はこれに大真面目に反対する書面を公開したが、なぜこんなトンデモ議案が再来するのだろうか。
- ベールに包まれた宇宙ビジネス、夢見る起業家の勝機はどこに?
米スペースXの「クルードラゴン」が5月31日に、民間企業としては初の有人宇宙飛行を成功させた。同社を率いるイーロンマスク氏をはじめとして、AmazonCEOのジェフ・ベゾス氏や、国内では堀江貴文氏といった著名な起業家が、宇宙を次のビジネス機会と捉えている。宇宙ビジネスのいかなる点にチャンスがあるのだろうか。
- アフターコロナは「バブル一直線」? 上昇止まらない株価
足元の景気動向は、コロナ前と同じレベルまで回復しているとはとても言い難いなか、日経平均株価の反転攻勢が止まらない。6月3日の日経平均株価は2万2613円と、コロナ前の水準まで回復した。その背景には、コロナ禍中の緊急的な金融政策の存在が大きいと考えられる。
- 炎上「宇崎ちゃん」献血コラボ継続の影で、ラブライブのパネルが撤去されたワケ
静岡県沼津市のJAなんすん(南駿)と人気アニメーションの「ラブライブ!サンシャイン!!」コラボが物議を醸している。女性のイラストに抗議が殺到するという構図は、日本赤十字社と人気漫画「宇崎ちゃんは遊びたい」がコラボした「献血ポスター」の事例が記憶に新しい。本稿では日本赤十字社側がなぜ抗議を受けても方針を変えず、JAなんすん側は抗議で方針を変えたのかをビジネス面から検討していきたい。
- 議員“マスク転売問題”から考える、転売ヤーの利益の源泉
"転売ヤー”が転売を正当化する論拠は、「需要と供給のバランスが崩れた価格設定となっているため、市場原理に則って価格をさや寄せしているにすぎない」というものである。需給バランスの偏りに根ざした正当なものだという主張があるが、その実態は消費者の信頼を換金しているにすぎない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.