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» 2020年06月29日 07時15分 公開

中島厚志がアフターコロナを見通す【前編】:デジタル経済に舵を切れ 「変われない日本企業」から脱却するために (2/3)

[武田信晃,ITmedia]

デジタル経済に舵を切れ

――9月入学が実現した場合、企業の新卒採用の方法にも変化が生まれ、企業の在り方や働き方にも影響してきそうです。

 今後、企業のビジネスの方向は「非対面」、つまり「デジタル経済」がより重視されることがはっきりしました。デジタル経済と言うのはデータが重要ですから、デジタル経済に進むことはデータを活用することと同義になります。私が長年住んでいたフランスでは、銀行のキャッシュカードの決済履歴のデータを匿名化した上で、政府が日次の経済分析に役立て、政策立案に戦略的に利用しています。国が主導したシステムを使い、国民の消費のパターンをビッグデータによってリアルタイムで把握しているのです。

photo フランスでは、銀行のキャッシュカードの決済履歴のデータを匿名化した上で、政府が日次の経済分析に役立て、政策立案に戦略的に利用している(エマニュエル・マクロン大統領、写真提供:ロイター)

 一方で日本では個人情報保護法などが壁となって、データの活用がなかなか難しい状況にありますね。従来の間接金融業務だけでは経営的に厳しくなるといわれている地方銀行ですらこういったデータを利用できていないと聞きます。決済データはリアルタイムに県内で何が起こっているのかが分かる「宝の山」です。もちろんデータの匿名化などは必要ですが、地銀が利用目的をはっきりさせた上で宝の山を使えるようになれば、地方創生にも大いに役立つはずです。

 個人情報の問題は承知していますが、今やスマホを使えばその人の行動履歴に基づいてターゲッティング広告が表示されます。データを活用する取り組みがあって初めてデジタル経済が進むのです。

――デジタル化という意味では、テレワークを始めた企業も以前よりは増えてきました。

 経済協力開発機構(OECD)の調査によると、OECD加盟国の中で日本企業はPCの利用率が平均よりも低い部類に入っています。ただし、PCを使うことができる人の割合は平均よりも高いのです。ここから推測できるのは、企業のPC導入率が低いということです。昔ながらの紙ベースの仕事スタイルから離れられず、デジタル化や効率化を進められない企業の姿が見えます。 

 もしテレワークが思った以上に浸透しなかった場合は、政府が強制力を以てテレワークを導入せざるを得ないようにしてでも推進した方がよいかもしれません。強制されなくても、働き方改革が叫ばれているのですから、中小の事業者の中でも変化に対応する企業は勝ち組になりますし、対応しない企業は淘汰されていきます。

――ただ中小企業がテレワークを進めるのはハードルも高いですね。

 今まではテレワークのシステム構築というとオーダーメイド、個別見積もりが一般的で高額でしたが、今は一律数十万円で請け負うという企業も出てきています。中小企業でも容易に導入できるんです。

 テレワークが進みオフィス面積を小さくできれば企業は固定費を減らせます。同時に高い人件費も減らせるかもしれない。経理・総務もクラウドでできる仕組みを取り入れてペーパーレスをさらに進めれば、経理・総務社員の負担も減らせる。ソフトを使えば自宅にいても伝票を処理できますし、ハンコも電子決済の仕組みがあるわけですから要りませんね。これからの時代は、デジタル化をしないと企業が持たない。企業規模にかかわらず、状況に対応した企業だけが生き残るということを見逃してはいけません。まして今回のような危機があればなおさらです。

photo テレワークのシステム構築を数十万円で請け負う企業も出てきている(写真提供:ロイター)

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