「孫正義氏はアリババへの投資で運を使い切った」中国メディアが分析するソフトバンク低迷の要因浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(2/3 ページ)

» 2020年07月02日 16時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

過剰投資がベンチャーの健全成長を阻害

 孫氏は4月、米フォーブスの取材に対し、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先企業について「(全88社のうち)15社は倒産するだろう」と述べた。株主総会では米コワーキングスペース運営企業WeWork(ウィーワーク)への投資で損失が発生した責任を問われ、「最大の責任は私にある。ウィーワーク(への投資)は最初から幹部が反対していた。反対を押し切ってやった私の責任だ」と率直に判断ミスを認めた。一方で、投資先の管理について「私、結構自信があるんです。ファミリーカンパニーが伸びているのは、ビジョン・ファンドを始めたからこそ」と語っている。

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(17年11月撮影)

 孫氏の姿勢に対し、BT財経の記事は「アリババへの投資が成功したのは、中国がインターネット産業の黎明期だったという時代背景もある。現在は少数のメガ企業がシェアの奪い合いをしており、目をつぶって大魚を吊り上げられる時代ではない」と指摘。SBGが出資する英国の通信衛星ベンチャーOneWeb(ワンウェブ)が、コロナ禍の苦境でソフトバンクなどの追加出資を受けられず経営破たんした事例を挙げ、「ソフトバンクのファンドはベンチャー企業が本来必要としている以上の額を出資し、急拡大を迫り、バブルを生み出し、健全な成長を阻害してしまう。ベンチャー企業は経営基盤を強化できないまま規模拡大に走るため、非常時にボロが出る」とソフトバンクの投資の在り方に疑問を呈した。

「投資」と「企業経営」は別物

 中国EC業界メディア「電商報」は「孫正義氏はヤフーの2匹目のドジョウを狙って、アリババを引き当て、ヤフー以上の成功を収めた。孫正義氏が各業界のユニコーン企業に投資するのは、その成功体験が基礎になっている」と分析する一方、「アリババの成功体験のコピーは、いまだできていない。アリババへの投資で運を使い果たしたというのが、本当のところではないか」と皮肉った。

 電商報はマー氏がソフトバンクから最初に出資を受けるとき、孫氏に「金は出すけど、経営に口を出さない」ことを求めたというエピソードを紹介し、「アリババは孫氏から資金を得て成功の足掛かりをつかんだが、資金を得たことよりも自身が身を削って努力を続けてきたことが、成功に大きく関係している」とし、「投資と企業経営は別物」と評した。

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