その「刃」が相手に向けられてしまうのを防ぎ、「正しく恐れる」(←知識人が好む言葉ですね)には、リスクコミュニケーションを徹底するしかないのですが、悲しいかな、コロナ禍では、いや、コロナ禍でも、全く機能しなかった。
リスクコミュニケーションは、個人、集団、組織などに属する関係者たちが情報や意見を交換し、その問題について理解を深め、互いにより良い決定を下すためのコミュニケーションです。それは一方通行ではなく双方向で、批判的ではなく建設的に、1回限りではなく継続的にやりとりされる「相互作用の過程」でもあります。
リスクコミュニケーションがうまく回るには、「信頼」が必要不可欠。専門家、政治家、メディアがそれぞれの立場で、それぞれの役割を誠実に全うし、「信頼」に基づく健康的かつ建設的な議論を行ってこそ、一般の人たちは「信頼できる」と確信します。それは「知る権利」が担保されることでもある。
ところが、信頼が熟成されないままで今に至ってしまった。そう思えてならないのです。
そもそも、新型インフルエンザが流行したときの経験を踏まえたリスクコミュニケーションの課題は、研究者がいくつもの調査報告書にまとめ、それらは「厚生労働省健康危機管理基本指針」でまとめられています。
……にもかかわらず、今回の新型コロナウイルス感染拡大防止策は、当初から「誰がリーダーシップを取っているのか?」が不明でしたし、専門家会議の見解が削除されるなど、私たちの「知る権利」が曖昧にされてしまった。
そして、何よりも忘れてならないのは「知る権利」には、「やっていいこと、悪いこと」の徹底も含まれているということです。
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