クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ハリアーはアフターコロナのブースターとなるか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)

» 2020年07月20日 07時02分 公開
[池田直渡ITmedia]
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 つまり法規に従うためには、あのレンズをもっと厚くしなくてはならない。かつてのトヨタならそうしたろうし、それもひとつの回答だろう。一方で、トヨタのクルマはカッコ悪いという声もまた世の中には多い。そしてウインカーをバンパー下に移設したことで、従来のトヨタのレベルを超越したあのデザインが成立しているのだとすれば、それで納得するしかない。

 嫌なら同じシャシーを使うRAV4を選ぶこともできるし、そもそもトラックなどはウィンカーだけでなくリヤのランプ系統は全部まとめて相対的に低い位置にある。ことに軽トラのランプ類の絶対的低さは相当なことになっている。しかし、当たり前のことだが、それで特別事故が多いというデータは無いし、無論法規の定める基準には抵触していない。ベストかといわれれば、ベストではないながら、危険性を裏付けるデータもない。

 多分ハリアーのデザインがトヨタのこれまでの水準を突き抜けられたのは、八方美人を止めたからだろう。ということで筆者はいくつかのトレードオフの中で、両立しかねたのであれば、これはこれで許容できるという結論に達した。コンサバでつまらないクルマを作って来たトヨタを冷たく見ていた筆者としては、突き抜けるためにセオリーを外したことを批判できない。

 ついでにいえば、理詰めで考えてベストなものだけで構成するなら、クルマはいくつかの理想パターンに向けて収束していってしまう。個性というものは「そのエンジニアが世間の正論に異を唱え、こうすべきではないかと提示する最適なリソースの配分」だと筆者は思う。「俺の考えた最強の妥協点」なのだ。それに納得する人だけが買えばいいし、いやなら他にいくらでもクルマはあると思う。それが無くなったらつまらない。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答を行っている。


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