クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ハリアーはアフターコロナのブースターとなるか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2020年07月20日 07時02分 公開
[池田直渡ITmedia]

公道試乗

 しかしながら、その程度のチェックは前回の袖ヶ浦フォレストレースウェイですでに済ませている。サーキットだからって全部全開でぶっ飛ばしているわけではないのだ。

 今回の公道試乗で確かめたかったのは、もっと複雑な速度変化だ。前のクルマが加速したと判断してアクセルを踏み足しかけた瞬間、前車がブレーキを踏む。あるいは同じく前のクルマの減速度がどんどん増えていって止まるのか、と思ったところからの再加速。そういうドライバーすら裏を書かれたような場面で、ストレスなく新たな操作を受け付けてくれるかどうか。そこの性能が低いクルマに乗っていると、そういう非常識な加減速をする前車のドライバーにイライラしたりするのだ。

 という意味で、ハリアーはドライバーに緊張を強いる場面がほぼ無かった。

 もっと基本的な部分で、シートの出来もまあまあ良い。特に運転席の環境では、フットレストやペダル類、ステアリングとの位置関係や調整代がしっかりしているので、実力以上にシートの出来が良く感じる。

 多分電動調整機構以外の差は付けていないと思われる助手席では、少し様子が違った。ちょっと腰が痛くなる。じっと座っている助手席の場合、運転席のように、手足の操作で体重が分散しない分、シートだけで体を支えなくてはならないので、乗員にとってシートへの依存度がより高まるせいではないかと思う。逆にいえば、運転席も含め、まだシートにはカイゼンの余地がたくさん残っている。

 リヤシートにもまだカイゼンの余地がある。2段階の手動リクライニングを備えるリヤシートは、定位置では少しトルソアングルが寝過ぎている。ただしワンノッチ分起こせば、適正な角度になるのでこれは良い。問題は座面だ。着座時の体感では、座面の前後傾きがほぼ無い。写真で見るとあるのだが、走行時の姿勢維持をチェックすると足りているとは言い難い。後席の乗員が、ブレーキの度に足を踏ん張って体が前へ滑らないように筋力を使うのはよろしくない。

 あとちょっと座面を前上りにすれば、済む話だ。フルフラットにした時の平面性にこだっているのかもしれないが、そんな二次的性能は、座るものとしての機能をちゃんと果たしてからの話だ。これは椅子であってベッドではない。

ハリアーのリアシートの課題

 乗り心地は相当に良い部類。トヨタのTNGAシャシー共通の弱点は床板の振動なのだが、ハリアーはそこを及第点に収めてきた。同じシャシーを使うRAV4ではその弱点がそのまま出ていたが、ハリアーは厚いフロアマットでそこを上手く隠しているのではないかと感じた。

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