スペインは年間約8300万人(2018年)の外国人観光客を受け入れる観光大国で(出典:外務省 スペイン王国基礎データ)、観光産業がGDPの1割以上を占める。対する日本は08年に「観光立国」の実現に向け観光庁を創設。東京オリンピックが開催されるはずだった20年に、訪日外国人旅行者を4000万人に増やす計画を掲げていた。
また日本では、15年の「爆買い」現象に代表されるように、中国・韓国からの旅行者がけん引力となり、訪日外国人旅行者は18年まで順調に増加。しかし、19年は日韓関係の悪化で韓国からの旅行者が激減、さらにコロナ禍が発生し、インバウンド拡大と五輪特需を見込んでいた観光業界はどん底に叩き落とされた。
観光業界の苦境は中国人旅行者が消えた2月から続いており、Go To キャンペーンも夏には感染が収束するとの見通しに基づき、4月に実施が決まった。
中国の観光専門家である王興斌氏は北京商報に対し、「日本の観光振興の思いは理解できるが、感染拡大局面でのGo To キャンペーンは無謀にしか見えない」とコメントした。
一方、シェア自転車が1年で全国に普及するなど、即断即決に基づく圧倒的なスピード感がウリの中国経済だが、アフターコロナの経済回復については、少なくとも日本よりは慎重に進めている。
3月末までに感染をほぼ収束させた中国は、PCR検査体制を健康診断レベルで受けられるほど拡充させ、個人の健康状態や移動履歴を分析し感染リスクを表示するアプリ「健康コード」も導入した上で消費・観光推進に舵を切った。
中国にとって幸いだったのは、4〜6月にかけて毎月3〜5連休があった点だ。連休に移動制限を緩和し、感染拡大が起きなければさらに緩和という段階を踏むことができた。
4月4〜6日の3連休には新型コロナ犠牲者の追悼式典が行われ、それを区切りとして人々が近場の商業施設に出かけ始めた。
5月1〜5日の5連休は北京の故宮博物院が人数制限を設けた上で再開。同月11日には上海ディズニーランドが人数制限と事前予約制を導入した上で営業を再開した。
直近の3連休は6月25〜27日の端午節休暇だ。中国観光研究院によると3日間で前年同期の半分ほどの約4881万人が国内旅行に出かけた。6月の中国は北京でクラスターが発生したものの、他の省では1日の感染者数がおおむね1ケタ以下にとどまっていたが、省をまたがない近場旅行が引き続き主流だった。
中国でオンライン旅行予約サイトのシートリップ(携程)などを運営するTrip.comグループの報告書によると、同連休中は高級宿泊施設の予約数が増加し、「近場での贅沢」が新たな潮流となった。また、キャンプやアウトドアなど密を避ける旅行スタイルが流行し、さらに遠出する旅行客の目的地も、チベットや雲南省など豊かな自然で知られる地域の人気が高まっているという。
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