「5000円分還元」にとどまらないマイナポイント事業の効果と、真の狙いとは?小売・流通アナリストの視点(3/4 ページ)

» 2020年08月04日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

コロナ対策は大きなチャンスだったが……

 マイナンバーカードに関しては、この仕組みができてからかなり年数もたっているが、なかなか普及してこなかった。これは、個人情報管理に関する漠然とした不安感という面もあるが、カードとしての使い道が身分証明書ぐらいしかなかった、というメリットのなさに尽きるだろう。今回、マイナポイントというインセンティブが付くことで、このカードの登録者が急速に拡大することを、当局は大いに期待していたはずだ。

 そうした中で、コロナ禍という想定もしなかったような事態が起き、コロナ対策の給付金等公的支援の受給という、これまで実感できなかったメリットのある用途が作り出されることとなった。すなわちマイナンバーカードを登録していれば、オンラインでの公的支援申請ができ、速やかな受給ができるという仕組みを整えたのだが、残念ながらシステム的な不備によって実質稼働しなかった。マイナンバーカードに登録したメリットをアピールする最大のチャンスであったにもかかわらず、その機をみすみす逃してしまったのだ。カード登録によるメリット訴求とインセンティブの連動によって、一気に登録浸透を図ることを目指した当局にとっては、大きな誤算となってしまったことだろう。

 徴税のための個人番号を国民全員に付与することで、「公平公正な社会の実現」「行政の効率化」「国民の利便性の向上」を実現するということが表明されているのがマイナンバー。これによって、国民のさまざまなデータを名寄せすることが可能になるので、行政手続きの一元化などの効率化が実現し、ひいては国民にさまざまな事務負担や時間の軽減を提供できるという建付けとなっている。

 国民の経済活動を、キャッシュレス決済の普及によってビッグデータ化し、マイナンバーによりさまざまな決済手段を横断的に名寄せすることが可能になれば、対象者の経済活動を簡単に把握することができるようになるだろう。これまで、現金取引では把握できなかった経済活動がデジタルデータとして記録されていくことで、例えば、税務調査の飛躍的な効率性向上が実現することになる。

 ――と聞くと、税務署がわれわれ一般庶民に対する徴税強化を狙っているように気味悪く感じるかもしれないが、実態的には逆の話だ。

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