ボルボ日本法人が着手した「オンライン接客」 “会ってなんぼ”を超える満足度向上とは?「近づけない、集めない」時代を生き抜く、企業の知恵(4/4 ページ)

» 2020年08月14日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]
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デジタルとアナログの融合で満足度を高める

 「2000年代前半までは、契約のはんこをもらうまでに6〜7回会うことが多かったが、今は平均1.7〜1.8回程度。商品情報は自分で収集できるから、『この店で、この担当者から購入していいか』を見極めることが来店の理由になる」(同)。実際に会う回数が少ないからこそ、その場で信頼してもらえないと契約してもらえない。たまたま顧客対応が何組も重なったからといって、店で長時間待たせてしまうと満足度は下がる。オンライン商品説明や来店予約を利用する人が増えれば、担当者も時間管理がしやすくなり、1組当たりの接客をより丁寧にすることも可能になる。

 店舗では、席に案内してどのくらいの時間がたったか把握できるようにするなど、サービスにデジタルを取り入れている。一人一人の用件や滞在時間を可視化しておけば、点検などに時間がかかっている場合は所要時間の見通しを伝えられる。デジタルだけでなく、アナログの接客を組み合わせてサービス向上を図っている。

 現在、約100店舗の全正規ディーラーでオンライン商品説明を始めているが、試乗案内や商品説明の動画は各店舗で制作している。動画制作は初めての試みであるため、当初は担当者が緊張していたり、声が車の走行音にかき消されたりしている動画もあったが、本社が提供するガイドラインなどを参考に、各店舗でブラッシュアップしているという。それも、店舗と顧客の関係を深める工夫の一つ。広報担当者は「本社が動画を制作して提供するよりも、店舗のセールス担当者が一生懸命説明する方が親近感を持って見てもらえるのではないか」と話す。商品説明動画は多いもので1万回以上再生されており、想定していた以上の反響だという。

 本格的なオンラインサービスの導入はコロナ禍がきっかけだったが、今後もオンライン化の流れは加速すると見て、サービスを充実させていく方針だ。ITの力を借りて合理化しながらも、誰が対応しても同じクオリティーでサービス提供できるように努めている。効率化や感染対策だけでなく、サービスの質や満足度を高めることも、オンライン活用の方向性の一つになっていきそうだ。

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