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横浜銀行、スマホ決済に「iD」追加 QRコードからシフト

» 2020年08月20日 18時08分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 横浜銀行は8月20日、三井住友カードと提携して、QRコード決済サービス「はまPay」に、新たに非接触決済サービス「iD」で支払える「はまPay タッチ決済」の機能を追加した。「QRコード決済か非接触決済かはお客さまに選んでもらうもの」(横浜銀行の決済ビジネス戦略室の室島山幸晴室長)とするが、はまPayのQRコード決済が利用できる店舗は15万店舗なのに対し、iDが利用できる店舗数は100万以上だ。

 QRコード決済には利用インセンティブはないが、タッチ決済では利用金額の0.25%を還元するインセンティブも用意した。

 従来のQRコード決済は、神奈川地域内を中心とした地域通貨として活用する。QRコード決済の特徴である導入の容易さを生かす。「我々は地域の銀行。地域振興を目指す。地元の花火大会などでキッチンカーが出たときに、iDでは店舗側が対応できない。iDとQRコード決済では目指していく方向が違う」(島山氏)

同じはまPayアプリにQRコード決済とiDが同居

 今回の特徴は、1つのはまPayアプリの中に、従来のQRコード決済と新たなiD決済が同居することだ。メルペイなどもQRコード決済とiD決済の2つの機能を持つが、はまPayの場合は決済方法として2つは独立している。

 QRコード決済は銀行Payの仕組みを使ったもので、決済金額はリアルタイムに銀行口座から引き落とされる。デビットカード的な仕組みだ。一方、今回のiD決済は三井住友カードのVisaプリペイドカードの仕組みを用いる。

 銀行口座から手動または設定したオートチャージで、バーチャルなプリペイドカードにいったんチャージする。プリペイドカードをiPhoneやAppleWatch、またAndroidのおサイフケータイにiDとして登録する仕組みだ。内部的にはVisaプリペイドカードを使うため、クレジットカード番号も発行され、ネットショッピングなどで利用できる。

アプリからタッチ決済を選べば、簡単にiDをApplePayなどに設定できる。QRコード決済ですでに銀行口座とのひも付きが完了しているため、設定は容易だ

 QRコード決済にはデビット的な即時引き落としを、iD決済にはプリペイド方式を採用した理由は何か。「デビットは口座内の資金が悪用される不安があるという声もあった。ATMで預金をおろして入れる形のほうが、キャッシュレスに慣れていない人には分かりやすい」(横浜銀行決済ビジネス企画グループの河原隆史調査役)。

 また、三井住友カード側でもプリペイドを推奨したという。「デビットは銀行のメンテナンスで利用できない時間帯がある。iDをコンビニなど夜間に使用するときにもプリペイドなら利用できる」(三井住友カード受託開発部の楠木康弘部長)。プリペイド方式を採用することで、上限金額も、QRコード決済の3万円からiD決済では10万円まで引き上げた。

5年で10万会員目指す

 今回は非接触決済方式としてiDを採用したが、準備が整い次第他の方式も採用を進める。現在、Visaはタッチ式の決済方式(NFC)の導入を急ピッチで進めており、はまPay タッチ決済でも、将来的に採用する見込みだ。「現在、Visaのタッチ決済はApplePayに登録できない制約があるのでiDを採用した」(横浜銀行)

 はまPayの利用者数などは公表していないが、タッチ決済に関しては「5年で10万会員くらいには増やしたい」(横浜銀行の河原氏)と目標を話した。横浜銀行が発行しているクレジットカードは127万会員を有しており、この人数が比較対象となる。

 国内金融機関としては、QRコード決済と非接触決済を同じアプリから提供するのは初めて。また銀行口座とひもづくバーチャルプリペイドカードをスマホ内で即時発行するのも初めてだ。

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